ボズ・スキャッグスと昭和40年男。

初めてのバイトはハンバーガーショップの深夜の掃除だった。と、いきなりタイトルと関係なくて恐縮だが、お付き合いくださいな。高校生で髪の長いロック野郎はなかなか仕事がなく、これくらいしかなかった。駅の構内にあるショップで、深夜0時までに店に入って朝5時に終える。初回こそ先輩がついたけど2回目以降1人だった。「バンズのゴマひとつ見逃すな」と先輩のありがたいお言葉ながら、それほど広くない店内でそれに何時間もかかるはずがない。そもそも掃除が苦手な僕に5時間も掃除をする箇所は見つからず、きっと評価は低かっただろう。毎度やることがなくなってしまう時間を埋めようと、ある日ラジカセを持ち込んだ。どうせだったらいつも聴いているのではなく、友人から借りてまだ聴いていないのにしようと、ボズ・スキャッグスの『ミドル・マン』を一通りの作業を終えてからプッシュプレイした。

 

これが僕とボズの本格的な出会いだった。真夜中に1人で聴いた『ジョジョ』に心を奪われたのだ。これ以前にも『ダイヤトーン・ポップス・ベスト・テン』から流れてくるヒットチューンは知っていたし、やがてトトとして大活躍する面々が支えるサウンドを教材にしていたりしたが、好んで聴く存在ではなかった。そんなボズへの印象をこの夜聴いた『ジョジョ』が一変させ、それまでに知っていたヒットチューンさえも好みに変えていったのだ。同アルバムに収録されていた『ブレイクダウン・デッド・アヘッド』なんかがまさしくそうで、『ジョジョ』に続いて流れたきたもんだから震えちまった。という夜になった。

 

ああ、長い前置きだった。去年『昭和40年男』の特集『昭和洋楽』の世界観をコンピレーションアルバムにしたいなんてわがままを快諾してくれた、ソニーの佐々木氏からリリースが届いた。来月の来日に合わせて4月24日に『グレイテスト・ヒッツ〜ジャパニーズ・シングル・コレクション』を仕掛けるとのことだ。相変わらず元気な彼だとニヤッと笑った。というのも、かつて感心させられたコンピに、僕がポリスのスチュワート・コープランドと並び、ロックドラマー世界最強の双璧だと愛しているトトのジェフ・ポーカロが関わった曲を集めた『ポーカロ・ワークス』なんてのを作っちまったのだ。1枚目が好評で2枚目までリリースしてちょっとしたヒットを飛ばした。僕も大のお気に入りな1枚、いや2枚である。

 

届いたリリースを見てまず探したのは『ジョジョ』で、しっかりとラインナップされていてうれしい気持ちになったのは、長〜い前置きに書いた通りだ。同世代諸氏にとってベストなセレクトとなる1971〜88年のCBS期に国内でリリースされたすべてのシングルを発売順に収録している。オマケは同じくCBS期に発表したミュージックビデオと、56ページブックレットまでついている。俺たちにグッとくるバッケージにご注目だな。

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