松陰先生。

彼がいなかったら、今に至る日本の姿は変わっていただろう。その魂は直接受け継いだ者だけでなく、こうして現在にも弟子を多く作っているのだ。以前取材に行った萩の明倫館小学校では、朝礼で松陰先生が残した言葉を読み上げるそうだ。学年と学期ごとに変わるそうだから、18の言葉をしっかりと心に焼き付ける。小さな弟子たちだ。日本人とはなんぞやと考えると、多くの名前が浮かんでは消えていく。その中で、吉田松陰の名は巨星の如く光り輝く。

 

この本に出会ったのはもう数年前だった。その名のとおり、一日に一つの金言が踊る。1月から日付が入っていて一つが半ページで綴られている。1分もかからず読めるものの、言葉によっては深く反芻するからいい朝になる。鏡を見て笑うことと、松陰先生の教えをいただくことを今年の朝の習慣にしようと決めた。

 

今日の教えは、“覚悟を失わず” だった。侍というものは、どんなに困窮しても絶対に侍の覚悟を失わない。また、立身出世したとしても、富裕や高貴におぼれて日頃の志を忘れることはない。正しい政治をして、民に恵みを与え、彼らの期待に沿うものである。と、今朝はこう説いていただいた。“侍” という言葉に込められた精神を、松陰先生は見事に表現している。このように毎朝の言葉には、先生の美しい心が透かし見えて気持ちいい。松下村塾の弟子たちが称賛して惚れ込んだその真心を、こうして書によって学べるのだからありがたい。タイムマシーンが開発されたらぜひ直接触れたい。

 

一つ、耳の痛い日があった。本当に人としての道を志した者にとっては、飲み屋街で遊んだり、誌や酒に狂うという暇は絶対にないときた。うーむ、まったくもってワタクシ、凡人以下にございまする。
 

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