貿易センタービルで見た真心。

このつぶやきでは、幾度となく登場してきた、浜松町が誇る高層ビルの貿易センタービルが昨日閉館した。「お疲れさまでした」の気持ちを込めて出かけてきた。エレベーターは動いていて、展望フロアの1つ下まで行くエレベーターに乗ってみた。その最上となる39階を押すとそこには行けないとアナウンスされたが、38階のボタンはピカリと発光した。ちょっとしたスリルを味わいながら、ややゆっくりに感じるエレベーターで上っていき、やがて扉が開いた。ガキの頃のような冒険心を味わいながら、そろそろと歩を進めていった。

 

38階は宴会場フロアだから、弟の結婚式があった場所かもしれない。ガランとしているのだが、ところどころの看板に照明が照らされていて、なんとも不思議な光景だ。そしてラッキーなことに、窓越しの眺望を独り占めできた。展望フロアの「シーサイドトップ」の閉鎖を聞いて、最終日間際に出かけたのが1月のことだ。ほぼ変わらない高さの38階の眺望を思いがけず楽しんだのだが、チキンな僕のハートがドキドキと鼓動を鳴らしまくるからのんびりできず、そそくさと下りエレベーターに乗ったのだった。

 

2階に降りて、あちこちを見回しながら別れを告げていると、窓を拭く職員さんに出くわした。明日よりは解体へと向かうビルであり、その必要はほぼない。だが、男性は丁寧に丁寧に拭き上げていて、しばし感じ入りながら見とれてしまった。

 

散々世話になった地下食堂街に下りた。この店であの人と、こっちでは店のおばちゃんと歓談したなどと想い出に浸っていると、さっきはなんとか我慢できた涙腺が崩壊した。ここでは床を、やはり丁寧に拭く別の職員さんがいた。いとおしむようにモップをかけるその姿から透けてくる心に僕は打たれた。

 

愛したビルが最後の最後にくれた感動に感謝しながら、1970年以来かっこいい姿を見せ続けてきたビルとの時間を締めくくった。開業予定は2027年とのことだ。うぎゃっ、還暦こえてるよ。

 

 

 

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