吉野家にて黒い牛丼!?

日曜の朝、東京のビジネス街に人はまばらで、走る車も極端に少ない。「ハードボイルドな俺に、日曜日なんてあんみつみて〜に甘い言葉はないぜ」と、肩で風切ってオフィスへと向かうカッチョいい男を演じていた。これから始まるハードワークに備えて、今日はうわさのカップヌードル、旨辛豚骨でも食おうかとまずはコンビニを目指していたが、その少し手前で足が止まった。黒くておしゃれになっちまって、もうハードボイルドな俺には似合わないぜと足が遠のいていた吉野家だ。

 

が、今朝は「もしや」と直感が動いた。いや、これはカンではない。長い長い吉野家愛が「もしや」と思わせたのだ。バシッとスイッチが入りインだ。「牛丼並ツユダクと卵ください」と告げて待つことしばし、運ばれてきた写真の牛丼を前に「もしや」は「やはり」に変わっていた。

 

ビジネス街のど真ん中で、日曜日は客が極端に少ない。するとどうしても長いこと温められているから、ご覧の通りツユが染み込んだ黒い牛丼になる。ツユにも肉のコクが滲み出ていて、コクのある濃い味になっている。それをツユダクにしてもらい極めて下品にいただくのは、これからのハードワークにはもってこいの朝飯だ。はやる気持ちを抑えて、血糖値対策に紅生姜だけをまずゆっくり噛んでいただく、ベジファーストならぬ紅ファーストは怠らない。そしてやがて、辛くない七味を毎度のようにたっぷりかけたらいただきますだ。黒い。濃い。そしてつゆだくによって下品の三拍子揃った1杯だ。うまい、安い、早いの三拍子にもう1つの三拍子が加わり、これは六拍子の並盛り丼なのだ。

 

今朝は向かいで見苦しいおやじが牛丼を頬張っていた。まさに中島みゆきさんの、吉野家を舞台に描かれた名曲「狼になりたい」のまんま、一人ぼっちで見苦しかった。顔にでかい絆創膏を貼っていて、髪の毛もぐちゃぐちゃでまさにみゆきさんワールドだ。ビールを呑んでいないのが残念だったが、食い終わって延々と楊枝でほじくっているのも、もう見苦しいを超えて愛らしかった。このエッセンスまで加わり、七拍子だぜと感謝しながら彼を残し、戦士はひと時の休息を終え吉野家を後にした。
「うまかったぜ、黒い牛丼」
トレードマークのオレンジから黒に外装を変えておしゃれになったはずだが、やはり吉野家は吉野家だと大満足だったのさ。「しかも牛丼も黒いぜ」とね。さっ、お仕事お仕事!!

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