浅草の名店でひとりの至福。昭和グルメと親父の残像。

浅草六区の地で、昭和25年から続く食堂を名乗る、ほとんどの客にとっては名居酒屋の「水口」が大好きだ。地元のダメなオヤジたちが集まってきては、朝昼晩と呑んでいる。そこに混じって定食を頬張る、よーく分かっているなと感心させられる若い女の子なんかもいたりして、歴史ある街で長いこと愛されてきた名店とはなんとも不思議な雰囲気を醸す。

 

この店の1階大テーブルは独りの客が次々に座り、思い思いの時間を過ごす。その1人になれた時、僕は神に感謝する。集中するわけでもなくテレビをぼんやり眺めながら、昭和を強く強く感じさせる肴でチビチビ呑っていると体中から疲れが溶け出す感じだ。必ずオーダーするのがこのマグロのブツと月見で、一緒に食えば山かけになる(!?) 素晴らしいコンビである。

 

ガキの頃、電気屋を営んでいた我が家では夕どきになると親父がチビチビと始める。その肴に俺たちガキは決して手を出してはならず、いつも美味そうで早く大人になりたいと願ったものだ。そんな美味そうな肴の2大スターがこの写真の2品である。「マグロのブツはいろんところが入っていて楽しいんだ」と言いながら、昭和の親父は至福を味わっていたことだろう。夏はクーラー取り付けの受注がものすごい数舞い込むから、あまり体の強くなかったオヤジにはこたえた。その疲れを癒すのが晩酌であり、マグロブツや月見だった。名店水口に行って、オヤジが愛した肴で疲れを癒していると「ああ、親子だな」なんてついつぶやいてしまう。そして「両方いただいているよ」と、その贅沢を親父に詫びたりする。うん、やはり至福だ。

 

この店はハイカラな昭和メニューも充実していて、スパゲティミートソースやナポリタン、ハンバーグなんかも絶品な上、昭和のエッセンスが半端でない。先日は麻婆豆腐に初めてチャレンジしてみた。文字ではなんとも表現し難いが、見事なまでの昭和だった。ここで独り過ごす男道は、『昭和40年男』を愛してくださっているみなさんには僕同様きっと至福のはずだ。自信を持ってオススメする。行ってらっしゃーい!!

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