不親切なグルメガイド。昭和な居酒屋を探せ!!

会社が浜松町に移って10年以上経つってのに、この名店を見逃しているとはまだまだオイラも修行が足りねえぜ。これほどまでに普通で正しい居酒屋は、昨今あまり見かけなくなってしまった。

 

「北村さん好みの店がありますよ」と、この町に引っ越してきたばかりの某レーベルの仲良しKさんから誘ってもらった。僕よりずっと若いのになかなかの居酒屋眼力があり、将来有望である。そんな彼の誘いだから当然ワクワクしながら後をついていった。「ここです」と促される。「おおーっ、さすがK氏だ」と心が叫ぶがそこは大人の威厳てやつを示さねばならず、静かに店に入った。長い浜松町暮らしだってのに、この店がある通りはなぜかほとんどノーチェックだった。逆に引っ越してきたばかりでここを馴染みにしているKさんおそるべしで、俺の座(!?)も危ういぜと思ったのだった。

 

演歌、タバコの煙、ねじり鉢巻、笑うと可愛いのにかなかな笑わないおばちゃん、家族経営などなど、居酒屋の武器をキッチリと標準装備している。以前もここでつぶいたことだが、僕の好む店は禁煙でない方が圧倒的に多い。昨今何かとバッシングを受ける愛煙家たちのパラダイスだ。本来、酒呑みにとってタバコは切っても切れないアイテムである。が、ハードボイルドが死語となり、そんな生き方が激減している現代社会は、その関係をヒステリックに断ち切ろうとしている。と、偉そうに語っているくせに、僕も禁煙生活が30年近いのだから情けない。まっこと残念ながら、僕はピカピカのキザな男を捨てたのさ。そのくせ、好む居酒屋はタバコの煙がもくもくしているのは、店主がハードボイルドを捨ててはならぬとの強い思いがあり、その心意気が店のアチコチから滲み出るからだろう。例えば『浅草秘密基地』の舞台となっているショットバー『FIGARO』は、マスターが吸わない(やはり禁煙組で僕と同じく日和ったのさ)のに灰皿はセットしてある。バーとはタバコをくゆらせなければならぬとの信念なのだ(きっと)。

 

つまみは華美な装飾がなく、最低限の付け合わせを盛り付けたシンプルな皿ばかり。そしてどれもうまい。グルメサイトで高得点を叩き出せる店では決してないが、素朴にうまいものばかりだ。刺身だって「新鮮でピチピチでーす」なんてものじゃない。そもそも刺身が新鮮でなけりゃならんかのように評するのは、いかがなものか。よーく眠った白身やマグロの赤身のうまさったらこれぞ大人の味ってもんだ。養殖の本マグロを食いながら「口の中でとろけます〜」なんてレポートする、間違った評価が横行しすぎている。そんなんじゃなく、現代が忘れさろうとしている普通のうまさがここにあるから、ご興味のある方はぜひっ。

 

今みたいに検索すれば一発でなんでもわかってしまう以前、『ビッグコミックオリジナル』で地図を載せないグルメガイドがあった。場所のヒントだけで探すものである。昭和のおっさんならば、たまにはそんな宝探しみたいなことを楽しんではいかがだろう。では僕より、不親切なご案内だ。大門の交差点を増上寺方向へ。左側の路地を入れば2〜30メートルほどのところにあるから、路地を1つひとつ眺めながら探してみてくれっ。健闘を祈る。

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