海を抱きしめて。

もうなんだかんだで7年も前のことだ。そもそもはその前年に発売したこの表紙のビジュアルがきっかけだった。おつきあいのあったワーナーの方から連絡が入り、一緒にCDを作りたいとのことだった。早速打ち合わせにでかけると『桜』のヒットで知られる河口恭吾さんがカバーアルバムを作るという。テーマは昭和とのことで『昭和40年男』にコラボレーションして欲しいとの、ことだった。ミュージシャンを夢見て生きてきた僕にとって、自分のモノでないにしろアルバム作りに参加できるなんて、こんなにうれしいことはない。ひとつ返事で引き受けると、アイデアを出してくれとのことだった。さらに1曲、僕の希望を入れていただけることになり『昭和40年男たちのメロディー』というアルバムタイトルにふさわしい曲を探した。いや、実際は探していない。この曲しかないとすぐに決めてしまった僕だ。河口さんの声で聞きたいということもあったし。

 

昭和40年男なら誰しもが藤谷美和子さんに恋しただろう。藤谷美和子さんというより『ゆうひが丘の総理大臣』に登場する藤村春子ちゃんですな。「フジムラッ」「そうりぃっ」と絡む感じがなんとも言えなかった。かわいかった。明朗なキャラで恋するのに十分の魅力があったのさ。

 

このドラマのエンディングにいつも感動させられていた。生き生きと描かれる映像に中村雅俊さんの飾らない歌がかぶさって、最後には短い詞が出てくる。ガキの俺たちの胸に入り込んでくる、わかりやすくいい言葉ばかりで、観終えると高い満足感が得られた。と、この曲を河口さんに歌っていただくようにお願いすると、プロデューサーの川原伸司さんも快諾してくれた。さらに僕は当時のCMソングを、それこそCMのように挟み込んではどうかとアイデアを出したら、これも実現したのだった。ちなみに川原さんは最新号で松田聖子さんについて語っていただいた大御所プロデューサーで、大瀧詠一さんや明日もラジオでご一緒する杉 真理さんも手がけた。作詞家としても活躍していて、聖子ちゃんには『瑠璃色の地球』を提供している。それにしてもこうやって色々とつながっているのだなあ。世の中ってのは狭いもんだ。

 

で、2013年の春にリリースされたこのアルバムを引っ張り出してふと考えた。人様に歌わせたくせに僕は歌ってないじゃないかと。いかんいかんと歌ってみると、うーむやっぱりいい。雅俊さんのような独特の雰囲気では歌えないが、だったら自分の歌にしちまえばいいんだ。河口さんもそうだったじゃないかと、近々『浅草秘密基地』で披露しようと考えている。歌詞も楽曲も、さすが当時の作家さんらしい出来栄えで、僕にとってこのタイプの歌はかなり新鮮である。きっちりと作り上げられてるなあと、歌いながら感心させられてしまう。1番も2番も歌い出しで提起がなされてサビできっちりと収束させる。同世代諸氏が心に刻んだ、生まれてこなければよかったなんてはきっと同世代諸氏で知らぬ者はおるまい。さらに2番の誰かが僕よりも眩しく見えてもやはりすばらしい。中坊の頃に心に刻んだ歌なのに、時の流れにまったくへこたれていない。でもね、雅俊さんと違いすぎるからガッカリさせてしまうかなあと、披露するのは悩ましかったりする。

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