親孝行に失敗してサブちゃんふたたび。

写真 1-1北島三郎さんが明治座で開催していた座長公演が、昨日無事に千秋楽を迎えたそうだ。46年間欠かさず続けてきた座長公演は今回でファイナルとなる。去年の大晦日には『紅白歌合戦』への出演も最後にしているから、来月78歳を迎える男の幕引きかと思ってしまうが、本人にいわせるとそんなことはなく現役を続けるとのことだ。ファイナルと聞いてチケットを取り先日出かけてきた。芝居と歌の2部構成で、休憩をはさんで4時間以上にもなる舞台は本当に素晴らしく、涙あふれる内容だった。そして千秋楽前日の一昨日に、再度このスーパーライブに出かけてきたのだ。というのも。

ある日お袋に電話をかけた。

「27日の土曜日の夕方時間取れない」「どうしたの」「サブちゃんの舞台のチケットが取れたんだよ。いつも世話になっている○○さんと一緒に行ったらどう?」「行けないよ、仕事だから」
お袋は74歳にもなってまだガンガン働いている。とはいえパートだし、有給だって取れるご身分である。それをたったひと言で断ってくるのは、つまりたいして興味がないのだ。よくよく考えれば、我が家にサブちゃんの偉大さを説いたのは親父で、お袋は別に騒いじゃいなかったことを今さら思い出した。せっかく親孝行しようと大金を払ったのに失敗だった。

会場にドーンと設置されたサブちゃんの像とパチリ。同じことをするお客さんで列になった(笑)
会場にドーンと設置されたサブちゃんの像とパチリ。同じことをするお客さんで列になった(笑)

ならばと親父からサブちゃんのことを押し込まれた男同士で行こうと、弟に声をかけた。お袋とはまったく逆の反応で、仕事だがなんとかするとの返事が来て、男2人で出かけてきた。1度経験済みだから、休憩時間の華麗な過ごし方も予習済みで、第一部の芝居が終わると「よし、35分の休憩だ」とすぐに席を後にして、物販コーナーへと直行する。スタンディング用のテーブルがいくつか設置してあり、ここでビールを呑るのだ。前回は出足が悪くてこのスペースがいっぱいになっていて、うまそうにビールを楽しむ旦那衆を眺めるだけだった。少しだけ明治座通になった僕は立派な旦那衆の仲間入りだ(笑)。

結果的には2度観てよかった。MCに至るまでしっかりと練り込まれていたことや、彼ほどの偉大なシンガーでも調子の善し悪しはあることを知った。それにガッカリしたのではなく、そうと感じさせないプロ根性や気合いの凄さを感じることができたことに感動したのだ。最後までパワフルに押し切る約30年先輩の姿は、今後の生き方までもご教授いただけたような気分だ。東京は昨日で終えたが、11月に大阪、来年1月には福岡でこの最終公演は続く。50歳を前にした男たちに心からおススメする舞台で、きっと僕同様生き方を考えさせられるはずだ。

終わった後は弟と久しぶりの差しの酒となった。人形町の汚い焼き鳥屋で北島談義が止まらない。そして今は亡き親父にバカ兄弟は心から感謝していた。カラオケに行くと必ずヘタクソな『風雪ながれ旅』を歌う。俺たち兄弟の原風景であり、サブちゃんの曲の中でもっとも好きな歌だ。そのおかげで、互いに40代の後半という人生の折り返しを過ぎてこの舞台を一緒に観て、同じ感動と明日へとの元気を得たのだから、あの世の親父もきっと喜んでいることだろう。お袋には孝行できなかったが、これもまたよしだ。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で