昭和40年男が愛するウスターソース。

昭和の食卓を盛り上げてくれた1つに、肉屋の揚げ物がある。僕の家は商売をやっていたから、給食のない土曜日の昼に「明広、今日はメンコロだよ」と言われるとそれはそれはうれしかった。トンカツは高いから禁止だが、十分にごちそうだ。金を渡されると肉屋へと走る。メンチとコロッケを4つずつオーダーすると、揚がるのを待つのはほんの数分なのだが、この間に近所のおばチャンたちが次々と来店して、なんらかの会話をしなければならないのが少々苦痛だった。今では考えられないが、社交性はいい方でない小学生で、大人相手にハキハキと会話できるヤツはすごいなといつも思っている子供だった。そんな苦痛に少々耐えれば、熱々のメンコロが手渡され、走って帰るとキャベツの千切りが山盛りとみそ汁が用意されていて、即いただきますとなる。親父はこれにウスターソースをバシャバシャとかける。キャベツも同様バシャバシャかける。僕と弟は中濃ソースで、親父は「ウスターの方がうまいぞ」といつも僕ら兄弟に言っていた。

だがそんな子供たちにも絶対にウスターでなくてはならない場面がある。昭和の東京下町で育った僕にとって、その代表的な料理がもんじゃ焼きだ。今でこそ全国区だが、この食い物は当時完全に東京下町ローカルだった。駄菓子屋に1つある鉄板を奪い合うようにしてもんじゃを焼いたのは、僕にとって当時のあたたかな原風景である。鉄板をいくつか並べた専門店も数多くあり、ここではゆったりと過ごせて、少々リッチな気分も味わえるから(激安だが)特別な日に出かけることが多かった。野球の試合の後や、期末試験の打ち上げなんかによく使った。もんじゃのおかげで、幼少のころよりウスターソースの良さも知り尽くし、いまだに中濃とのこだわりの使い分けをしている。

半カレーともりそばのセットは780円なり。昨今の激安ランチにあっては高値である。
半カレーともりそばのセットは780円なり。昨今の激安ランチにあっては高値である

もんじゃと双璧を成す、ウスターソースが威力を発揮するメニューがこれだ。そう、黄色いカレーである。今ではほとんど見ることが無くなったが、北村家のカレーは小学生の低学年のときはまさしくこれだった。S&Bの赤い缶で作るとろみがないカレーだ。このコクのないカレーにウスターソースをかけるとあら不思議、おいしい1皿に変身するじゃないか。ここでも親父は僕ら兄弟とは異なり、醤油だったのだが(笑)。

会社の近くにある、昔ながらの極普通のそば屋である日、この半カレーセットをオーダーしたときは狂喜乱舞した。「あの頃のカレーだ」と。しかもこのメニューをオーダーした者に、ウスターソースを一緒に出してくれるのがうれしい。テーブルにセットしてある醤油か、それとも一緒に出されるウスターソースか。僕はもちろん後者だが、年配の方はこれを使わず醤油の方もいる。この店には、昭和グルメを楽しむおっさんたちが毎日集っているのだ。ああ、ウスターソース!!

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2件のコメント

  1. シャバシャバの黄色いカレーね。
    なつーーーっ。
    お好み焼きの本場に今居る俺は、ついついというか、ほとんどお好みソースがあたりまえになっていた。
    このあいだウスターソースでカツを食ったら、懐かしい旨さが込み上げてきた。
    いいね、ウスターソースも。
    美味しく食せることへ、改めて感謝。

    • そんなんですよね。ウスターソースってなんだか懐かしさを感じますが、当時の揚げ物にかけた記憶はほとんど無いんですよね。不思議!!

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