昭和57年、17歳の俺たち。

ジョンクーガー
パンクムーブメントが終焉を迎え、シンプルなロックものが次々にヒットしたのが昭和57年の洋楽シーンだ。ジョーン・ジェットの『I Iove Rock’n’roll』やJ.ガイルズバンドの『Centerfold』などがビックヒットを記録した。ジョン・クーガーもシンプルなロックを詰め込んだアルバム『American Fool』をぶちかまし大ヒットさせ、一躍トップシンガーの仲間入りを果たした

 好評連載特集の『夢、あふれていた俺たちの時代』は、次号で昭和57年をお送りすることになり、現在詰めの作業に入っている。昭和40年男たちにとって17歳を迎えた年だ。

年齢ってヤツをブランド価値で判断すると、17歳ってもっともその資産が高いと思わないか? 最近の若者にとってはどうなのかわからないが、僕らの時代は16、17歳ってテーマになった曲も多く存在した。自身の生活で考えても、高校2年生になり、もっとも心が不安定な成長を見せたときじゃないだろうか。中学時代も不安定さでは負けないが、外部からの刺激の方が強く心を揺り動かして、ちょっと危うい不安定だ。高校時代になると、ドンドン芽生えてくる自我と、少し広がった視野でとらえる世間からの刺激が折り重なって、自ら大いに悩む不安定さだったと思う。将来なんてことも意識し始めたりするのは、翌年が大きな決断を強いられる高校3年生だから。その直前の、不安定さを謳歌できる確信犯的な自分でいたりもして、中途半端な毎日と不安定さをごちゃ混ぜにしながら月日の変化の中でうごめいていた。今になって振り返るからそういえるというのも多分にあるが、17歳がテーマになった曲を始め、秀逸なコンテンツが多くあるのは、そんなもっとも多感な時期だということの証だろう。

僕はといえば、高校をクビになりそうになった(笑)。高2時代の担任が、ロックンロールに明け暮れる髪を延ばした汚い僕のことを大嫌いらしく(まあ、当然だな)、ある日のホームルームの時間に、なんのキッカケがあるわけじゃなく目一杯の力を込めて言った。
「北村君、あなたはクラスのばい菌なの。ばい菌は周囲にうつるから学校から出て行ってほしいの」と。いやはやよくぞここまでのセリフを、クラスメイトの見守る中で言い放ったものである。しかもなにかヘマをやらかしたとか、悪いことをしたのでなく、突如たまっていたものを吐き出したかのようだったのだ。これにはさすがの僕も落ち込み、辞めた方が世のため人のためだと半ば決心した。

そもそも教師になりたくて高校受験したのだが、合格してから進学する僅かな隙をついて、以前から組んでいた同級生たちとのロックバンドで人生初のライブをやった。すると強く憧れていた教師の夢なんかあっさり捨て、ミュージシャンへと完全なる方向転換をした。ロックはそれほどの麻薬だったのだ。そんな高校生活だから勉学なんてどうでもよく、ただ、入学した以上は出るのが義務だろうと考え通っているだけだった。合格祝いに親からギターを買ってもらったことも、この高2に至ったときにはうまく担保を取られたことになっていた。だが、そんな気持ちをすっ飛ばすには十分な威力を持った「ばい菌」発言に落ち込みながら下校するときに、通称『元気ちゃん』との堀口先生に声をかけられた。お解りだろうか、名字が堀口だからあだ名が『元気ちゃん』であり、体育教師だ。
「おうっ、北村。どうした? なんか元気ねえなぁ」と、体育教師ならではの口調で問いかけてくれた。
「○○○(名前呼び捨て)にさあ、クラスのばい菌だから学校出てけって言われたよ」と答え「辞めた方がいいよな」と続けた。
「おおっ、お前それスゲエじゃねえか。クラスの空気って言われるよりよっぽどいいぞ、ばい菌の方が。気にすんな」と。17歳なんて単純なもので、そう言われればそうだなと。おお、ならばどっこい、ばい菌人生を送ったろうじゃないかと翌日も元気に登校し、以降も担任を困らせ続けたのだった。あの時、元気ちゃんが声をかけてくれたおかげで僕は卒業できたんだと、後に本人に礼を言った。

と、みなさんにもきっと甘酸っぱい想い出がたくさんある17歳だろう。その度に心を癒してくれたのが音楽で、とくに洋楽は言葉の意味が分からないから自分の心の状況と、曲調を都合良く掛け合わせて、これは落ち込んだヤツを励ましているんだとか、夢を見ることは大切なんだと励ましてらったりした。はたまた、失恋して落ち込んでいるのだろう、僕も一緒だよなんて、そんなワガママな楽しみ方ができるのが洋楽の良さの1つでもあった。ではここで、傷ついたセブンティーンズのために、この曲をお送りしましょう。ジョン・クーガーのアルバム『American Fool』のオープニングナンバーで『Hurts So Good』。どうぞ心のタイムマシーンに乗って、あの日へと旅立ってくれ。

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2件のコメント

  1. 私は1・2年のクラス担任が元気。

    いつか秘密基地に招待しましょう(笑)

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