老犬とおっさん。

彼と出会ったのは、平成16年のことだった。雑種だがそこそこのお利口さんで、たくさんの芸を覚えて大会なんかで多くの賞品を次々とゲットして、家計を支えてくれた(!?)。東京オリンピックが決まった頃、男子マラソンを沿道で彼を抱きながら応援するのを夢見たのは、そんな長生きができたらすげーなとの思いからだった。が、見事に夢が実現できそうになっていたのに、まずマラソンが北海道に移り、ついには延期となってしまった。こうなったら延期のマラソンをクーラーの効いた部屋で一緒に過ごそうなんて、夢をリセットした。そして迎えたワンワンワンの日、1月11日の誕生日に17歳になった。

 

犬を飼うのは人生で初めてだ。当初、僕は一切面倒を見ないことを約束の上で飼い始めたから、一切の面倒を見ずにシカトしていた。主に女房が面倒を見て、息子がサポートするという生活だ。だがある日、2人が不在の日の玄関でひたすら待ち続けている忠犬の姿を目にした。まるで動こうとしない彼がいじらしくて、僕は散歩に誘ってみた。すると尻尾をブンブン振りながら喜ぶではないか。「かっかっ、カワイイ!!」と、この日から僕は家族からだいぶ遅れを取ってしまったドッグライフを歩み始めたのだった。

 

人間で例えればもう80歳をゆうに超えているそうだ。最近の衰え方はそれ以上にも感じられるほどで、トイレが下手くそになった。瞳の曇りが徐々にひどくなっていて、視力もかなり低いようで何でもないところにぶつかる。耳も遠くて、かつては玄関の向こうの足音に反応して玄関まで迎えにきていたのに、今では鍵を開ける音どころかチャイムにも反応しないことがある。悲しい現実が日に日に色濃くなっている。

 

が、はしゃいでいる時の天使具合は初散歩に連れ出したあの日と変わらない。写真のように、他人様から見ればただの老犬でしかないが、僕にとってはやはりかけがいのない家族であり、永遠の天使だ。が、正直な話別れはいつだろうなんてよくない考えもチラつく。特に夏に弱いから、去年も9月の中旬過ぎに涼しくなってきて「ああ乗り越えた」とホッとしたくらいだ。今年も夏を乗り越えてくれれば、また来年のワンワンワンの日をきっと祝えるはずで、18歳を迎えたい。ええーいっ、こうなったら20歳まで生きて成人(犬?)式じゃ。

 

ここで同世代諸氏にお勧めする。今から飼い始めるときっと70歳くらいまで生きるから、仕事人生の後の潤いになるはずだ。それだけでなく、犬は散歩させてなんぼだからきっと足腰の維持になるし、何よりの恩恵は地域とつながれることだ。仕事人生が終わって孤独になりがちなハードワーカーたちは、今のうちに対策しておいたほうがきっといいはずですぞ。

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