イタリアで4年前に感じたユーロ。

ユーロがほころんでますな。僕が生まれて始めてユーロ圏に出かけたのは4年前のこと。幸せなことにバイクイベント取材のチャンスを得られて、単身イタリアミラノへ乗り込んだのだった。飛行機と宿だけがセットになった、シンプルな格安ツアーを利用しての5日間は、刺激にあふれた一人旅になった。

格安パックゆえ直行便でなく、ロンドンのヒースロー空港で乗り換え待ち合わせに4時間以上というスケジュールだった。その時間を利用して数分でもいい、ロンドンの街を歩きたかったが、チェックインとアウトに相当の時間を要するとのことで断念した。いい加減さで有名だった乗り換え予定のアリタリア便は、噂どおりに2時間以上の遅れが生じ、やっとこさ深夜0時ごろにミラノのホテルに到着した。チェックインをしようとホテルのフロントマンとつたないイングリッシュコミュニケーションを試みると、到着が遅いから別の客を入れたと言っていた。おーっ、これがイタリアなのね。飛行機が遅れたぶんの時間は待ってくれないのね。緊急時用のツアー会社の下請けダイヤルに連絡すると駆けつけてくれ、日本語と英語がごちゃ混ぜになったコミュニケーションを済ますと、逞しくフロントに抗議をしてくれた。ああ、情けない僕だ。一人旅のつもりだったが、こうした助けがなけりゃなんにもできないのか。もっとも、緊急ダイヤルがなければもっと必死に抗戦したと思うが。結局別のホテルに移ることになり、家を出て約25時間を経てのチェックインだったのである。呑みたい酒をグッとこらえて、現地時間の朝4時頃ベッドに入り、わずかな睡眠で飛び起きて取材へと出かけた。

街はイメージしていたイタリアミラノとは少々様子が違っていた。街はゴミだらけで、犬のウンコがあちらこちらにあり、たまに踏んでこけそうになる。石の古い建物は落書きだらけで、せっかくの街並が台無しである。この荒廃ぶりってなんだかなという気分で、世界最大のバイクイベントといわれるミラノショーの会場に着いた。これはスゲエと感激の雨あられの後に味わったランチで物価と直面する。イベント会場のランチなんざまずいものだと頭ではわかっていても、ノビノビのパスタに香りのよくない魚のフライ、パンとミネラルウォーターで18ユーロ(当時為替で3000円越え!!)は、ちゃぶ台だったら引っくり返してしまうほどの低コストパフォーマンスだった。翌日以降はシンプルなランチにしたものの、2000円越えは覚悟しなければならない。中心地のレストランも同じようなもので、感覚的にはものすごく高い。せっかくファッションの本場に来たのだから、靴とジャケットくらいは手に入れようと目論んでいたが、感覚的には日本の倍までいかないがそれに近いレベルで手が出なかった。失礼ながら、落書きとゴミだらけの街になってしまうような民意レベルと、物価がまったくつりあっていないと感じたのだった。

このショーに25年以上来ているバイク業界の大先輩のセリフだ。「イタリアはリラのままだったらこんなことにならなかった」と。すでに4年前のことである。僕自身も帰国して親しい方には「イタリアがこのままユーロに踏みとどまることは無理だ」と興奮気味に話していたほどだ。

さあ、正念場が続くユーロ圏で、この年末から年明けにかけてどう動くだろうか? ソフトランディングからしか活路を見出せないでいるのは、世界中の共通テーマであるのかもしれない。もちろん日本も、そして僕の身の回りもしかりで難問ばかりだ。ハードランディングも常に意識しながらの、大胆かつ繊細な仕事が求められているのだろう。

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