切ない恋心!!

 

秋風が吹くとこいつが恋しくなる。僕にとっての温かいそば部門ではオーダー率トップをぶっちぎりで走る、ご存知たぬきそばだ。「なんてったってダイエット中だからね、今日はこのミニで我慢しよう」と箸を割ったらあら大変。僕は無意識に頼んだのだろうか、ご覧のどんぶりが追いかけてきた。

 

 

出されたものは残さず食べなさいが我が北村家の厳しいしつけだったから、仕方なく箸をつけたのさ(笑)。いやいや、本当に席に座る瞬間までたぬきそばのつもりだった。ここは出汁にネギを入れてしっかりと火を入れてくれる一手間があり、ガキの頃家の並びにあったそば屋のたぬきを思い出させてくれる1杯で、大好きなやさしい味だ。もちろん僕が愛する昭和な店内と元気なおばちゃん、厨房ではお年を召した店主がテキパキと、そして黙々とオーダーをさばいている。完璧な昭和街そば屋である。

 

カレーライスが人気で、昭和なおっさんたちの多くがそばとのセットでかっこんでいる。今日はカロリーの高いカレーには手を出さないぞと心に誓って出かけたから、カレーセットは鉄の意志でスルーできた。が、席に着いた僕を誘惑したのがミニたぬきとカツ丼のセットの文字だ。瞬間的にスイッチが入ってしまい、しかもおばちゃんはそれとぴったりとシンクロするタイミングで麦茶を置くじゃないか。ここに思考なんてない。何も考えられないまま「カツ丼とミニたぬきのセットをお願いします」と言っていた僕だ。これは僕の本当の意志ではないのだと開き直るしかなかった。そして待つこと数分でまず見事なたぬきがテーブルに届き、続いては本日の主役と言っていいだろうカツ丼さまのお目見えでーい。

 

考えてはいけない。罪を罪として認めてはいけない。せめて食い終わるまでは至福のままに、そして本能のままに箸を動かそうと決め込んでかっこむかっこむかっこむ。「どのくらい逢っていなかっただろう、君と」と切ない恋心の少女のような気持ちでかっこんだ。そして米粒1つも残さず平らげ僕は言う。「もう2度と会うのはよそう」と、切ない恋はそのまま悲しい終結を迎えたのだった。いやいや、ともかくしばらくこの店に近づくのをやめよう。冷静になって反省している今である。

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