佐賀紀行 (4) 旅のカタチ。

思いがけず、長い連載企画のようになってしまった先週末の佐賀の旅レポートだ。僕はそれまで、佐賀県をのぞいた46の都道府県で酒をくらい滞在した。つまり先週末は、記念すべき全国制覇だったのである。

唐突だが、この歳になったからか、旅先のスナックが心地よく感じる。地元の話を聞きながら歌を楽しむ。他にお客さんがいれば、またこれも楽しく盛り上がれる。年配者ばかりだから、気づかい無くゆったりとくつろげるし、いいこと尽くめである。大きな街ではバーに繰り出し、今回のような小さな街ではスナックに入る。

知らない街でスナックを利用する際の作戦は「スミマセン、旅の者ですが1人2000円位でお願いできますかね?」と、酒呑みとしては極めて無粋だが、まあちょくちょく法外な値段でやられたことを考えると、学習したと割り切ればよい。もともとは先輩から教わった技なので、皆さんも使ってみたらいいと思う。

昨日綴ったとおり、瓦蕎麦の店『田舎屋』で大満足で宴を終え、ご主人に良心的なスナックを紹介して欲しいと伝えた。すると「ちょっと待っててください」と、クルマを我々の前に止めて、スナックへ送ってくださるという。直行便である。「老夫婦でやっている店ですから」と、送迎付きでのスナック入店は生まれて初めてで、ささやかであるがVIP気分である。蕎麦屋のご主人は、僕たちを紹介すると去っていった。人の良さそうな夫婦がカウンター越しにいて、いろんな話と歌を楽しんだ。なんでも定年退職してからこの地で開店したとのことで、まだ開店して1年ちょっとのこと。ずいぶんと思い切ったことである。温泉地だから大きなホテルを含めて宿が数件あり、スナックは客が拾えるのだろう。

7時をちょっと過ぎたところだったから、まだ宿の客は夕食時である。僕たちはスナックを貸し切り状態でさんざん楽しみ、やがてフラフラで店を出た。すると今度はスナックのご主人がクルマを出してくれ、歩いても5分程度のところを宿まで送ってもらった。またもやVIPな気分の3人がたどり着いたのは、それとはほど遠い安宿で、シンデレラタイムは終ったのである。部屋で先ほど仕入れた酒をチビチビ呑りながら、旅人3人は終止笑顔のままだった。さすがに疲れは蓄積しているようで、10時過ぎに消灯という3人ともに今年最も早寝の夜になったのである。

楽しかった九州から本州へと渡る関門海峡大橋だ。旅の終わりはいつもさみしさを連れてくる

翌日、朝6時にスッキリと起床した。そもそも8時間も眠る連中ではないが、夜通し走った疲れと、楽しかった夜がそうさせたのだろう。本番であるイベントは1000人以上を集める大盛況で、仕事も大成功に終った。片付けを済ませて午後2時にイベント会場を後にして、またまたひたすらの激走でオフィスに戻ったときにはもうカラスが鳴いていた。現地滞在時間は24時間とちょっとで、移動時間の方がはるかに時間を取られた旅だったが、このカタチはありなのではないだろうか? 金曜の夜中に出て、月曜日にはオフィスで戦士になれる。しかも気分はバッチリだ。高速道路は深夜割引があるからお得だし。今回はドライバーが2人だったからちょっと疲れ気味だったが、4人もいればずいぶん余裕はあるだろう。

歩く旅、自転車の旅、電車の旅…。移動手段によって楽しみ方も変わり、またその手段そのものが旅なのである。遠くはなれた地を楽しむには、その距離を感じた方が趣き深くなるはずだ。さあ、旅立つのだ男たちよ。

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