涙の自由が丘。

編集長のつぶやきとは、なんといいタイトルなんだろう。好き勝手に綴っていいのだという免罪符のような都合のよさが込められている。今日は日頃以上に好き勝手が炸裂だぜ。

 

今日のつぶやきは、この焼酎ボトルのタグから始めよう。“バイク石井さん友だち”と書いてある。近年は親しみを込めて“親父”と呼んでいたのがここに書かれている石井さんで、去年の晩秋に逝ってしまった。昭和20年生まれの74歳だった。バイクメディア関係者の中で彼を知らぬ者はおるまいという有名人で、女性ライダーの専門誌『レディスバイク』を立ち上げた男だ。それ以前からも親しく付きあわせていただき、20年前にうちの会社に招聘してアドバイザーとして活躍してくださった。

 

よーく一緒に呑んだ。歌が大好きでよーく歌った。呑むときは十中八九、彼が根城にしていた自由が丘で、2軒目によくこの店に連れて来てもらった。今年10周年を迎えるのだが、それ以前のママさんが営業していた頃から石井さんは常連だった。去年、ずいぶんと久しぶりに1人で顔を出したときに、僕を特定するためにこのコピーをタグにしたためたのだろう。実はこの日付、11月19日は少々不思議がある。なんでかこの店のことを思い出し、早めに終わった飲み会の帰る途中でわざわざ下車して久しぶりに寄った。石井さんの話で盛り上がったものの、あまり体調が良く無いなんてことをママさんに伝えて店を出たのだ。そして不思議だとしたのは、久しぶりに彼の話で盛り上がったその4日後に逝ってしまったからだ。呼ばれたのか、それとも何か虫の知らせだったのか命日は11月23日だ。

 

このタグを見ながら客ががなりたてるカラオケを聞いていると、カウンターでバカ話をしながら歌の順番を待っている石井さんをついつい思い出してしまう。1人酒だからなおさら、浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返す悲しい酒になった。涙はなんとか我慢して過ごし、会計を終えるとママさんにとどめを打たれた。僕の前でママさんが「石井ちゃ〜ん、10周年だよありがとう」と大声で言ってくれたのだ。石井さんと僕に対するあたたかい気持ちに、ついに我慢は限界に達してしまった。

 

葬儀はご家族で執り行われ、僕はお別れ会の主催を買って出た。が、年末進行に追われる出版業界と、友人に高齢者多いことから少し間を置き暖かくなってからということにしていたが、憎っくきコロナに奪われている状態のままだ。この悔しさも、不意の涙につながっている。コロナのバカヤロー!!

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