昭和な立ち食いそば屋。

JR上野駅の不忍口の真ん前に、ずーっと昔からある立ち食いそば屋がある。写真右に見える、大きな器にそばが上下するチープなアイキャッチマシーンが素敵だ。僕が上野の居酒屋でバイトを始めた17歳の頃よりこの店はあるから、少なくとも37年以上は変わらず営業を続けていることになる。当時、東京にはまだ少なかった関西風のだしをいただいたのは、ここが初めてだった。そしてここでは迷わずきしめんだ。

 

「きしめんの方」と呼ばれて懐かしの一杯を受け取ると、見事にハイティーン時代へフラッシュバックだ。華美でなく普通にうまい。天ぷらの種類も豊富でこれまたうまく、立ち食いそば屋のマストアイテム、コロッケだってキチンとラインナップされている。店内は広く、多くの客がズルズルやっていていつも活気がある。

 

昨今の立ち食いそば屋は圧倒的にチェーン店がのしてるが、こうした単独店にどうも惹かれてしまうのは、小銭を持てるようになった頃に入った店のほとんどがそうだったからだ。高校の近くや、中坊の頃より入っていた音楽スタジオの近くにあった立ち食いそば屋は、どちらも独自の味とスタイルがあった。ガキの頃よりそば好きにさせてくれたのは、そんな立ち食いそば屋が、200円ちょっとで至福へと連れて行ってくれたおかげだ。

 

このきしめんがずっと続いて欲しいと願う。そんな味が東京にたくさんあるが、1つひとつ減少しているのが寂しいったらない。根っこさらに根っこの方にあるのは、金が金を生む昨今の社会構造と無関係であるまい。だが、もうきっと戻れないだろう。せめて僕は僕の好む店をひたすら応援して、少しでも長く続いてくれることを願うのみだ。

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