『ぎんざNOW!』のおもひで。

テレビ解放区 幻の『ぎんざNOW!』伝説(加藤義彦・著/論創社刊)定価:2,000円(+税)

当サイトのS40ニュースで『ぎんざNOW!』の本について触れていて、ガキの頃の自分がガツーンとフラッシュバックした。本当にいい番組だった。ナウでヤングな番組で、情報ってのがこんなにもおもしろいのだと初めて感じさせてくれた番組かもしれない。後にナウでヤングにはなれなかった僕だが、実はこの番組のワンコーナーがその後の人生に及ぼした影響は計り知れない。

 

「北村君に、素人コメディアン道場へ出てもらおうと思います」」と学級会で議題に上がった。コメディアン道場は、予選を勝ち抜けばその出場を推薦した者にカメラが送られる。そいつでクラスの想い出を収めようという美しすぎる提案だった。多数の賛成でこの議案は可決した。運動神経が鈍く、足が遅くて鈍臭い僕だったが、笑いにかける情熱だけはクラスのみんなが認めてくれたのだと、心の底からうれしかった。ちなみに当時の僕のアイドルはドリフターズであり、小松の親分さんであり、ベンジャミン伊東だった。

 

2人の男を指名して、3人組のトリオを組んだ。グループ名は忘れてしまったが、多分センスのかけらもないものだっただろう。原稿用紙が支給され、それに僕は台本を書いた。そして練習に明け暮れて出陣した会場は、熱気に満ち満ちていた。小学生は僕らだけで、おそらく中学生もいなかっただろう。ガキという点ではかなり目立った。

 

稽古場のような部屋に68組の出場者がいて、明日を夢見る先輩たち共々体育座りでびっしりだ。熱気だけでなく、人口密度により温度が上昇するのなか、予選が始まった。次々と繰り広げられる芸はレベルが高く、僕らは残念ながら下の方のレベルだと自らで感じさせられた。お兄様たちの芸を次々に見て長い1日が終わり、敗北感を背負った帰路は3人とも暗かった。

 

お笑いの道には進めなかったが、俯瞰すれば僕もエンタメの世界にいる。そんな今につながったと思える時間だった。芸を追い込むことの凄まじさを、小学生のガキがリアルに感じられたのだ。貴重な経験をさせてくれた『ぎんざNOW!』に、今も深く感謝してる。

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