1984年『グラマラス・ライフ』シーラ・E

洋楽追想記

セクシーな美貌と歌声で昭和40年男をメロメロにしたシーラ・Eは、あのプリンスのバックアップでデビュー。マイケル・ジャクソンのライバル的な存在として登場したプリンスの才能も、我々をおおいに刺激した。

1984年『グラマラス・ライフ』シーラ・E
1984年『グラマラス・ライフ』シーラ・E
プリンスとシーラ・Eの共同制作による彼女のデビューアルバム。タイトルトラックの『グラマラス・ライフ』は、ビルボードの全米チャートで7位をマークする大ヒットだった。この曲のビデオクリップでのシーラ嬢の派手なパフォーマンスは、パーカッション演奏の概念を大きく変えたといえるだろう。森高千里がデビューした時、同じようにパーカッションを叩いていたのも、今にして思えばシーラ・Eの影響だったにちがいない。

昭和40年男にとってのブラックミュージック界のスーパースターといえば、やはりマイケル・ジャクソンを真っ先に思い浮かべる人が多いだろう。82年末に発売されたアルバム『スリラー』は、超特大のベストセラーとなり、83年の洋楽シーンは、このアルバム一色といっても過言じゃなかった。

さらに、この時代は、MTVをはじめとするミュージックビデオ番組の人気もあって、多くのアーティストがビデオクリップにお金をかけるようになった。なかでも“音楽を見せる(魅せる)”ということに関して、最も自覚的であり、才能を発揮したのがマイケル・ジャクソンだった。彼の成功は、『ビリー・ジーン』や『今夜はビート・イット』『スリラー』といった優れたビデオクリップ抜きには語れない。音楽と映像を融合させる術に長けていたマイケルほど、MTVブームを有効活用したアーティストはいなかったと思う。彼はMTVの申し子だった。

そんな時代の寵児・マイケルの対抗馬として突如登場したのが、プリンスだった。彼の名を世間に知らしめたのが、同名映画も大ヒットした84年のアルバム『パープル・レイン』。彼もまた、マイケル同様に映像とのメディアミックスを積極的に行ない、成功を収めたアーティストだったが、音楽や映像から伝わってくるムードは、マイケルとは真逆なものだった。

当時、MTVで初めて見たプリンスのビデオクリップは、ジミ・ヘンドリックスばりにギターを弾きまくりながら過激にパフォーマンスするもの。ダンスを完璧にこなしながら、ポップで洗練された作品として完成させるマイケルとは明らかに異質の、危険な香りがプンプン漂っていた。ビジュアル面でも、スマートなポップスターといった感じのマイケルに対し、小柄なプリンスは手足も短く、顔だってイケメンというわけじゃない。それなのに、ステージ上の彼は、ただならぬオーラを放っていた。

そんな圧倒的なカリスマ性を持った両者だけに、当時の洋楽ファンの間では“マイケルvsプリンス”という対立構図が、いつのまにかでき上がっていて、スノッブな連中はマイケルを支持し、新しいモノ好きの連中はプリンスを支持していた。ちなみに僕は、圧倒的に後者で、東京ドームで行なわれたプリンスの来日公演は、ほとんど観に行ったくらい、当時は心酔していた。もちろん、現在では、マイケルも“キング・オブ・ポップ”としてリスペクトしているけれども。

そんなプリンスには、ファミリー的なミュージシャンが何組もいた。映画『パープル・レイン』に出演していたザ・タイムというバンドもヒットを飛ばしたが、最も鮮烈だったのが、女性パーカッション奏者のシーラ・Eだ。84年にリリースされた彼女のデビューアルバム『グラマラス・ライフ』は、プリンスの全面バックアップを受けた作品として、大きな話題になり、当然ながら大ヒットした。

そのアルバムからのシングル・カット曲だった『グラマラス・ライフ』のビデオクリップも、我々昭和40年男にとっては忘れられない。細身のラテン系美女であるシーラ・Eが、パーカッションを乱れ打ちし、最後にハイヒールでシンバルを蹴り上げるシーンは、実にカッコよかったなあ~。サウンド的にはプリンス色が全開といった感じで、楽曲もキャッチーで最高。80年代半ば頃のプリンスの勢いが見事に反映されたヒットチューンだった。

当時のシーラ嬢は24歳で、昭和40年男は19歳。あの頃の実感としては、もっと年上のお姉さんに見えたものだが、意外と若かったんだなあ~と、今さらながらに思う。

最後に余談ですが。シーラ・Eのお父さんは、ピート・エスコヴェードという有名ミュージシャンで、70年代にはサンタナのメンバーとして活躍したり、アズテカというラテンバンドを組んでいた。父と娘がそろってラテンパーカッション奏者なんて、すごくステキだと思いませんか?

 

文:木村ユタカ

昭和40年、東京都生まれの音楽ライター。ロック、ソウル、日本のポップスなどを得意ジャンルに、音楽誌やCDのライナーに執筆。

※「昭和40年男」vol.27(2014年10月号)掲載記事

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