初めての少女マンガ(悶絶編!)

昭和40年男の悲惨な戦い

昭和40年男の少年時代は、決して楽しいことばかりじゃなかった。今思えば笑っちゃうようなことでも、俺たちは真剣に悩み、戦っていた! ここではホロリと苦い「悲惨な戦いの記憶」を通じて、昭和40&50年代という時代を振り返ってみたい。

少女が大人になることを『りぼん』でこっそり教わった!

俺たち昭和40年男がガキの頃は、野球マンガの全盛期。『巨人の星』の星飛雄馬に憧れ、消える魔球を日夜練習し、消えてもいないのに「今消えたよな!」とか盛り上がっていた。『ドカベン』を読んでいないとクラスの仲間に入れなくて、デカくて不良っぽいやつはすかさず岩鬼と呼ばれたりもした。

…だが俺はこっそり少女マンガを読んでいた。すぐ上に姉がいたので家に『ベルばら』(註:『ベルサイユのばら』)が全巻あり、毎月の『りぼん』もあったのだ。最初は「誰が読むか!」と思ったが、家にある他のマンガを読みつくしてしまい「仕方ねえな」と思いながら『りぼん』をパラパラめくってみた。
主人公は小学校を卒業したばかりの少女。両親と幼い弟と一緒に、坦々と暮らしている。と思ったら異変が起こった。あるページを開くと、少女が顔にタテ線を何本も引かれワナワナしている。何があった?

「おかあさーん、来てー!!」

悲痛な叫びをあげる少女、だが家には父と弟しかいない。「どうした?」という父の声にビクンと怯え、部屋の鍵をかける。

「〇〇子、開けなさい!」
「いやあああっ、お母さんじゃなきゃいやあああっ!」

だが次のページをめくると…あれ、騒ぎは収まっている? 少女のそばには笑顔の母が。

「怖くないのよ。これでアナタも大人になったんだから」

娘の頭をなでる母。どーゆーこと? さらにページをめくると夕食シーン、食卓に赤飯が!

 少女「…どうして?」
 「アナタのお祝いよ」
 「おめでとう、〇〇子」
 少女「…お父さんに言ったの? ひどい! わああっ!」

泣きながら弟の頬をビンタし(あんまりだ!)部屋に駆け込む少女! その後を「待ちなさい!」と母が追って――どうやら「少女が大人になり、祝いに赤飯を炊いた」らしいことだけはわかった。

そして毎月手元にやってくる『りぼん』では、3ヶ月に1度くらいの割合で、赤飯を炊く話が載っていた! さらに男をとっかえひっかえするフシダラな母が、中学娘の異変にいち早く気づき「アンタ、メンスが遅いんじゃないの?」と言ったり、よくわからないけど、でもなんだかイヤらしい!

ここで恐る恐る『ベルばら』にも手を伸ばしてみた。すると全10巻そろうなかの8巻目で、それは起こった! この8巻目でオスカルとアンドレは戦死してしまうのだが、その直前に訪れた、ふたりだけの夜!

 オスカル「今夜私を、アンドレの妻に…ああだけど、怖い!」
 アンドレ「怖くないから――」

オスカルを抱き上げて半ば強引にベッドに放り、その上にアンドレが――ぎゃーっ、コレ読んでいいのか俺!

その日はしばらく悶々として眠れない夜を過ごし、翌日学校に行くと友達は相変わらず消える魔球の話をしていた。コイツらガキじゃねえのか、と当時小5の俺は思った。というわけで少女は大人になり、しかもそれを赤飯で祝うことを、俺は少女マンガで知ったのだった。

さすがに最近は赤飯炊いて祝う家庭も少ないようだが、先日ある母が「娘が大人になったので赤飯を炊きました」写真をSNSでアップして「そんなこと拡散されて娘がかわいそう」と物議をかもしていた。とにかく俺は小5から読み始めた『りぼん』のせいで、以降40年あまり、今でも赤飯と聞くと頬がポッと赤らんでしまう。アホだ。

さて因果はめぐる。俺は今、月イチで料理教室に行き、かあさんの味コースで和食を習っているのだが、この3月のメニューがついに赤飯! そして周りの生徒は若い娘ばかり! 
最後まで鼻血を出さず赤飯を炊き上げる自信が、俺にはない。怖くない? うるせーよ。

文:カベルナリア吉田

【「昭和40年男」vol.48(2018年4月号)掲載】

昭和40年生まれの紀行ライター。普段は全国を旅して紀行文を書いている。この1月に新刊『ビジホの朝メシを語れるほど食べてみた』(ユサブル)出版したからヨロシク! 去年出した『おとなの「ひとり休日」行動計画』(WAVE出版)、『突撃! 島酒場』(イカロス出版)、『何度行っても変わらない沖縄』(林檎プロモーション)、『狙われた島』(アルファベータブックス)全部ヨロシク! 2月17日には東京・世田谷の「かなざわ珈琲」で手料理つきバレンタイントークショーやるから来てくれよな!

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