友人がプラチナチケットの相方にと声をかけてくれた。ファンの方には申し訳ないが、アルバムは1枚しか聴いていない僕だ。それも、息子をロックにハメる入門用に、9歳の誕生日に贈ったもので、僕自身は数度プッシュプレイしたにすぎない。加えて初期のヒット曲を数曲知っているといった程度で、会場を埋めたお客さんの中では、極めて失礼なやつだっただろう。
埼玉スタジアムでのコンサートは初めてで、いやあでかいでかい。中央のスタンド席から見える演者はコロボックル(懐かしいね)くらいだ。が、今時のコンサートは映像を駆使して松本さんの指先まで見え、かっこいいセットと相まって異次元へと連れて行ってくれる。音もきれいで、昔々の武道館やドームで聴いた音とは段違いにいい。
デビューから30年だそうだ。ずっと第一線で走り続けてきたのはご周知のとおりで、並大抵の努力ではないだろう。50歳を過ぎた自分だから余計に、ちょっと歳上のお2人に脱帽である。『昭和40年男』の兄貴の説教に出てくれないかなあなんて夢描きながら、約2時間半のパフォーマンスを楽しんだ。
僕が感動させられたもっとも大きなポイントは、一つひとつの音に対する集中力が半端でないこと。流さないと言ったらいいだろうか、2人とも粒だった音をしっかりと客席へ届ける。松本さんの早弾きもえいやっといく早弾きでなく、粒だった音がたまたま早いといった感じだ。聞き逃しちゃならぬ、魂の音を受け続けた幸せな時間だった。
終了後は、誘ってくれた友人と当然のごとく一杯呑った。かつてのスターを寛容な心で過ごすライブもあるよななんて話から、B’zは年齢とか衰えをまったく感じさせないなと。デビュー以来の大ファンである彼に言わせると、稲葉さんの声は衰えどころかむしろ高くパワフルになっているという。どんだけすげー兄貴なんだろう。そしていつまで現役でいられるのだろうかなんて意地悪なことも話し合った。2人で共通したのは、稲葉さんは少しでも落ちたら現役から退くんじゃなかろうかということ。それほどに完璧と近いところに彼はいた。発展途上のくせにまだまだ追い込みきれていない僕には強い刺激となり、アンコール終了後にはやはり涙腺がぶっ壊れていたとさ。