東海道、徒歩の旅で感じた春。

昨日もここに書いたとおり、前々号から連載している“東海道キン・キタ徒歩の旅”
に出かけてきた。当初は3月18日から3日間を予定していたが、地震の影響のた
めその時期に出かけるのはあきらめ、ひとまず延期していた。その後は様々な、
それこそ想定外の業務が舞い込んでくるなかでの激しい動きが求められることに
なり、ロケの時間を作れず、今号は1回お休みするということも考えた。だが光は
見えるものである。通常であれば4・5月の土日はイベントで目一杯なのだが、こ
とごとく中止や延期となっていて、そこのスケジュールが当然のことながら空いて
しまう。そこで今回は2日間に日程を縮めて、この土日で出かけてきたのだ。

天気に恵まれ、とくに土曜日の静岡県はかなり気温が上がり、シャツ1枚で十分
なほどだった。桜は完全に散ってしまっていたが、どっこい春というのは素晴らし
い。私もいるのよーとでも言いたげに咲き乱れていたよ。僕も金子も花ってヤツに
は疎いので、「きれいだねー」としか言えない。「ああ、これは○○○だね。○○の仲
間だよ」みたいに格好良くキメたいものである。前々日まで被災地にいた僕の心
に染み入った静岡の春。すべてが前へと向かっていくエネルギーに充ち満ちてい
て、包み込んでくれたよ。このロケでは毎度思うことなのだが、歩き続けるという
行為はとてもポジティブになれる。何時間もかけて自分の足で前に進んでいくわ
けだから、自然と気持ちまでもが前向きになっていくのだろう。そして長時間歩き
終えたビールのうまいこと。汗かいた後とか、思いっきり笑った後とか、他にもうま
い場面は多々あるものの、12時間も歩き続けてのビールの味は格別である。体
の乾きと心地よい疲労感に加えて、心がポジティブになっていることが手伝って
余計にそう感じるのであろう。

呑んでいると、その日、目にしたものの記憶がフラッシュバックする。歩くスピード
というのはそのまま人間のスピードなんだね。速く移動することのすばらしさはも
ちろんある。でもね、人類史を俯瞰で見たらごく最近の技術でしょ。歩くスピードと
いうのは人類誕生からず〜っと刻まれてきたものだからさ、自然なんだね。せっか
く花が咲いているのだから、立ち止まって楽しみたい。頬をさすっていく風は変化
に富んでいる。山はその雄大さを、少しずつ姿を変えながら長い時間誇示し続け
る。普段見落としてしまっているものを、すべて感じることが出来るのが歩くという
行為である。

旅にはいろんな手段があり、どんな方法であっても男にとって必要不可欠。そして
その中に徒歩という手段を付け加えることを強くオススメする。きっといい発見が
あるはずだ。

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