【ファッション狂騒曲 スウェットの世界 #2】知っておきたい、日本を代表するスウェットのこだわり。

日本を代表するスウェットブランド、
「ループウィラー」の編みと縫製のこだわり。

 
部屋着としても街着としても運動着としても活躍してくれる。これほど優秀なユーティリティプレーヤーは他にない。アイテムを通して、作り手へのインタビューを通して、知ってるようで知らなかった “スウェット” の今昔物語を読み解いていこう。

(『昭和50年男』本誌 2021年 11月号/vol.013 掲載
 “ファッション狂騒曲”「深掘りすべきスウェットの世界」より 抜粋・再編集 )
 

[前回]
【ファッション狂騒曲 スウェットの世界 #1】
 知っておきたい、スウェットの起源とは?

 


 

 
■LWベーシック LW01

▲LWベーシック LW01 / 17,600円 (税込)

 
ループウィラーが考える “ザ・スウェットシャツ” が「LW01」。“LWベーシック” と呼んでいる生地は、表糸・中糸・裏糸にどの番手 (太さ) の糸を使うかで数多くの試し編みを経たオリジナルレシピにて製作。首周りの前後にガゼットが付いた仕様がクラシックだ。
 

▲背面のガゼット
▲タグのデザイン

 

 
■LWベーシック LW05

▲LWベーシック LW05 / 2万900円 (税込)

 
「LW
05」は定番プルオーバーパーカ。LW01と同様に、身頃のサイドに縫い目のない丸胴タイプ。筒状で編み上げる吊り裏毛を使っているからだ。縫製では適所に “フラットシーマ” を使用し、肌への当たりがやさしい。

 

 
■LWライト LW290

▲LWライト LW290 / 2万2,000円 (税込)

今作に使われる生地の “LWライト” は、裏毛のみを細くすることでLWベーシックと同等の風合いを備えながら、適度に肉厚感が抑えられて、軽快な着心地を生む。見た目も軽快で、コーデ時にすっきりめのシルエットを作りやすい。

 
■希少な編み機とミシンで。
 愛と誇りのある「ループウィラー」のもの作りとは

▲吊り編み機でじっくりと編まれていく
▲「ユニオンスペシャル」のミシンで平らに。愛情を込め、誇りを持って作られると、製品の出来上がりが変わってくる

 
ループウィラーは、1999年にスタートした日本のスウェットブランドだ。「世界一正統なスウェットシャツを」との想いから妥協なきもの作りを行っている。その “正統” の根拠となっているものとは何か? 代表の鈴木 諭氏に話を聞いた。

「ループウィラーのスウェット生地は、和歌山の工場で “吊り編み機” と呼ばれるマシンを使って編んでいます。吊り編み機というのは、ミノムシのように天井から吊り下げられているところから日本でつけられた名称です。その歴史は古く、日本に初めて入ってきたのは明治初期とされています。現代の日本に残っている吊り編み機は、スイスまたはドイツで製造されたマシンをもとにして大正から昭和の時代に日本で作られたものです」

かつて、スウェットの生地はほぼすべてが吊り編み機で編まれていた。1965年くらいまでがデッドラインで、以降は高速で編める新型のマシンに切り替わっていった。’70年代に入ると、生産スピードが遅い吊り編 み機の生地は姿を消していく。

「糸になるべく負担をかけずにゆっくりと空気を含みながら編み上げるのが、吊り編み機の特長です。1時間に1m、特殊な生地になると30cmしか編めません。1台の編み機が1日に10時間稼働したとして、10mしか編めないのです。これをスウェットにすると7~8着分にしかならない。確かに生産効率はすぐれていません。しかし、綿という植物が本来もっている自然のパワーをなるべく減らさないで生地に編み上げてくれるのが、吊り編み機です。そこにメリットがあります」

まず、生地を編み込むための針が違うという。吊り編み機に使われている針は、釣り針で言うところの “返し” が付いていない。返しがあると糸は固定されるが、返しがないと糸は自由になれる。糸が自由に動けるということは、余計なテンションがかからないということ。テンションがかかると、糸は伸びた状態で編まれてしまう。

本来なら1mmの直径があるはずの糸が細くなった状態で編まれてしまうというわけだ。本来なら、1mmの糸は1mmのままで編みたい。綿のパワーを活かすためには、その方がいいのだ。

「綿のパワーとはすなわち、丈夫で復元力があり、手触りがふっくらしているということです。 生地の裏側のループも立体的に仕上がり、やわらかい着心地が得られます。さらには、耐久性があるのも利点。洗濯を繰り返すと生地はやせていくのですが、その進行が高速で編んだものと比べて抑えられます」
 

▲着心地のよさを高めてくれる裏面のふっくらループ

 
ループウィラーには熱烈なファンが多く、10年選手のスウェットを愛用している人も。すなわち、ループウィラーが生み出すスウェットは買い替え需要には不向きなのだ。古いものはどんどん捨てて、新しいものをどんどん買ってくれた方がブランドは儲かるのかも知れない。だが、大量に作って大量に破棄する、そんなライフスタイルが行き詰まっていることは。今や明らかとなった。安い工賃が期待できる海外に生産地を移し、とにかく大量生産することでコストを下げ、売れ残りはセールし、それでも売れ残ったら廃棄する。このシステムのどこに、もの作りに対する愛や誇りがあるのだろうかと考えてしまう。
 

■世界中に誇ることができるメイド・イン・ジャパン

ループウィラーは、1999年から愛と誇りのある仕事をしてきた。
 
「’99年にループウィラーを立ち上げた時、私は40歳でした。日本の繊維産業が疲弊し、衰えていくのを強く感じたのは、’95年あたりから。アパレル生産のチャイナシフトが起こっていくなかで、私が繊維の専門商社で糸を売る仕事をしていた20代からつき合いのあった工場が次々と閉じられていくのを見てきました。吊り編み機を保有している工場も ’80年代後半には10軒あったのが、当時は2軒になっていました。私がループウィラーを始めたのは、『このままだと、吊り編みの生地が作れなくなる。この生地が日本から失われてしまうのは大きな損失だ』という強い危機感があったからです」

愛と誇りのある仕事が行われているのは、吊り編み機で生地を編む工場だけではない。生地を裁断してスウェットの形に縫製する工場も愛と誇りの現場だ。

「縫製は青森の工場で行っています。ここは、縫い子さんのクオリティが違います。100人近くが働いている立派な工場ですが、平均年齢は32歳ほど。毎年、若い人を雇い入れて会社としての新陳代謝ができています。いくら技術と機械があっても若い人が入ってこなくなったら終わりです。現場には『ループウィラーのお店にどういうお客さんが来て、手に取って、大事なお財布を開いてくれて、笑顔になってくれているか』ということを伝えています。そうすると、縫い上がってくるスウェットのオーラが違ってきます。単に仕事で縫っているのと、お客さんのことを思って縫うのとでは仕上がりが全く違うのです」

ループウィラーのスウェットをよく見ると、フラットになっている縫い目があるのがわかる。これは、「ユニオンスペシャル」のミシンを使い、“フラットシーマ” という縫製方法が採用されているからだ。4本の針を使って平面縫いができる同ミシンは1962年頃にアメリカのユニオンスペシャル社によって開発されたが、時代の趨勢で生産終了となり、現場から消えていった。青森の工場では現存する希少なミシンが稼働している。高度な縫製技術を要し、常日頃のメンテナンスを欠かさず、細かい調整を繰り返しながら、着心地のよい一着へと縫い上げているのだ。
 
 
→次回へ続く…
【ファッション狂騒曲 スウェットの世界+】
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 #1 … 王道ムードのアメカジコーデ。

 
 
取材・文: 國領磨人  撮影: 西谷圭司  スタイリング: 金井尚也
写真提供: ループウィラー 
 
掲載アイテムに関するお問い合わせ:
ループウィラー 千駄ヶ谷 Tel. 03-5414-2350
 


 
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▲p.136~「ファッション狂騒曲 / 深掘りすべき スウェットの世界」
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