商業ロックの恩恵!!

昨日ふれたとおり、次号の『夢、あふれていた俺たちの時代』では昭和57年を取り上げる。そこでビルボード年間チャートをのぞくとこんな風になっていて、大いに盛り上がった僕だ。

1 Physical /Olivia Newton-John
2 Eye Of The Tiger /Survivor
3 I Love Rock ‘N’ Roll /Joan Jett & The Blackhearts
4 Ebony And Ivory /Paul McCartney& Stevie Wonder
5 Centerfold『堕ちた天使』/J Geils Band
6 Don’t You Want Me Baby『愛の残り火』/Human League
7 Jack and Diane /John Cougar
8 Hurts So Good『青春の傷あと 』/John Cougar
9 Abracadabra /Steve Miller Band
10 Hard To Say I’m Sorry『素直になれなくて』/ Chicago
11 Tainted Love / Soft Cell
12 Chariots Of Fire『炎のランナー』/Vangelis
13 Harden My Heart、『ミスティ・ハート』/ Quarterflash
14 Rosanna /Toto
15 I Can’t Go For That (No Can Do) / Hall & Oates
16 867-5309/Jenny 『ジェニーズ・ナンバー/867―5309』/Tommy Tutone
17 Key Largo『キー・ラーゴ~遥かなる青い海』/Bertie Higgins
18 You Should Hear How She Talks About You『気になるふたり』/Melissa Manchester
19 Waiting For A Girl Like You『ガール・ライク・ユー』/Foreigner
20 Don’t Talk to Strangers /Rick Springfield

商業ロックとの言葉が、たしかこの前年あたりから使われるようになったのではないだろうか。当時の僕らはど真ん中で成長していたから、そんな呼び方をあまり気にしなかったが、今となってはロック史を俯瞰で見ることができ、ウーム確かに一理あるなと頷くことができる。このチャートを見て盛り上がりながらそんなことを考えてしまった僕で、同感だというタメ年たちは多いのではないだろうか。ビッグヒットの影に予算がチラチラし始めたのが、70年代の中頃以降で、ヒット作品は金で作り上げるものにその後ドンドン傾いていった。それ以前だってそんな手法は横行していたのだが、あからさまになったのがという意味でだ。

僕が愛するリッキー・リー・ジョーンズのデビューアルバム『浪漫』は、ワーナーグループの威信をかけて制作されたなんて話があるし、その数年後にミュージックビデオ全盛になると、そのクオリティやおもしろさがヒットを左右する時代にもなって、こっちにも制作費がガンガンつぎ込まれるようになった。でもそれは決して悪いことばかりじゃなく、僕らにいい影響もたくさん残したのだ。実際、リッキーのような素晴らしいシンガーを愛するに至ったのは、予算がつぎ込まれたアルバムのおかげで出会えたから。そして、リッキーの歌唱や楽曲の素晴らしさという部分はまったく関係のないところだ。

この年間チャートを見ていると、そんな時代背景の中で揺れ動いている感じも見られて楽しい。3位のジョーン・ジェットなんて、まったく予算がかかっていない荒削りな曲だし、アルバムもものすごくラフだ。これが爆発的なヒットとなったのは、シーンへのアンチテーゼが作用したのではないか。ジョン・クーガーが年間チャートに2曲入れているのも、きっとそうだ。無名のシンガーが一気にメジャーシーンに斬り込んだ、まんまアメリカンドリームだった。

J.ガイルズバンドそして僕がもっとも注目したいのは、J.ガイルズバンドの『堕ちた天使』が5位だということ。知る人ぞ知るという存在だった彼らが、一躍シーンの中心に躍り出たのはこの曲であり、アルバム『Freeze Frame』の成功である。これ以前の彼らったら、ストーンズやフェイセスよりずっと硬派でピリッと締まったロックンロールばかりを提供していた。このアルバムにも彼ららしい曲は影を残しているが、タイトルチューンや大ヒットした『堕ちた天使』、AORに転身したかのようなバラードナンバーは一体なにがあったのじゃってほどの転身で、このロック魂バリバリの彼らでさえ商業に走らせた時代なのだろう。でも結果、この成功により70年にデビューしたロックンロールの宝的な存在のバンドが消滅してしまうのだから、なんとも皮肉な話であり、巨大マーケットとなったロックシーンの恐ろしさすら感じさせる。

と、偉そうに語っている僕も、この宝物バンドを発見したのは『堕ちた天使』がキッカケであり、十分にロックスピリットを感じながら受け入れた。そして、これ以前のアルバムを掘っていき知ったのは、なんとも凄まじいロック魂と天才としか言いようにないボーカルだった。後にもっとも影響を受けた1人になるピーター・ウルフとの出会いは、商業ロックシーンなくしてはなかったかもしれないのだ。こんな風に、ビッグマーケットの恩恵で生まれた音楽は多数あり、その勢いを感じながら多くの名曲を受け止めてきたのも、俺たち昭和40年男の幸運なのだ。

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2件のコメント

  1. 商業ロック??

    産業ロックなら聞いたことがある。ジャーニーのこと。

  2. スティーブ・ペリー似の編集長さま、こんばんは。
    S57年のベストヒットを順番に動画探して、それをつまみに飲みました。
    30年以上経った今、当時のPVが見られるなんて素敵です。当時はこんなこと考えられなかったし。
    昭和40年生まれはそういう意味で恵まれてるかもしれないですね。
    PVというコンテンツが残ってる。今、それが見られる。幸せです。
    ウォークマンとかベータとVHSとかレンタルレコードとか、
    あって当然ではなかった時代が17歳、でしたよねぇ。切り替わりが、ちょうどこの時だった気がします。

    ジョン・クーガーやピーター・ウルフ、ただ歌ってる姿だけで泣きそうになるのは
    彼らが素敵なだけじゃなく、ワクワクしてた高校生の自分がそこにいるから、今それに会えるからですね。

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