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喫茶店のミートソース

2012 年 2 月 14 日 プロデューサー コメント

昨日は次号特集の取材で、対象者のご自宅でインタビューだった。東京都心からベッドタウンへと伸びる私鉄のとある駅で降りた。予定時間より少し早めに着き、見知らぬ街で蕎麦でも食べようかとぶらついたが、立ち食いしか見つからなかった。あとはどの街にでもあるチェーン店ばかりで、独自性がある店は喫茶店くらいしかなく、ランチの看板を覗くとセットメニューがラインナップされている。正確な記憶でないが、喫茶店でのランチは少なくとも20年以上のご無沙汰だろう。うーむ、悪くないなとトビラを開けた。

 

ビッシリと埋まった客はほぼすべて僕より年上だろう。おばちゃん連中の笑顔が並び、タバコの煙がいかにも喫茶店の空気で、白いブラウスのお姉ちゃんがテキパキと働いている。迷わずオーダーしたのはミートソースのスパゲティセットで、当然のごとく大盛りにした。待つこと約10分で運ばれてきたのは、昭和40年男の記憶と寸分狂わずシンクロするものだった。マッシュルームと炒められた極太のスパゲティに遠慮がちなソースがかかっている。キュウリの薄切りが3枚と少量のキャベツの千切りにトマトが一切れ乗り、白いドレッシングがかかっているサラダもなんとも懐かしい。タバスコと粉チーズもしっかりとサービスされ、思わずニヤつきながらフォークを持った。

 

パスタではなくスパゲティだ。油まみれの麺はフォークに巻き付けるのが困難なほど滑らかな仕上がりといえばよいのだろうか、もの凄くオイリーである。ソースと麺のパランスがまったく取れておらず、しばしマッシュルームの炒めスパをタバスコの塩っけで味わう。少しずつ愛おしむように甘ったるいソースを混ぜていき、バランスを考えながら食べ進めていった。まだイタリア料理などという概念が浸透していなかった高校時代は、こんなスパゲティがごちそうだった。なんとも懐かしいあの頃にトリップしているうちに完食し、タイミングよくコーヒーが運ばれてくると、お約束でスポーツ新聞を広げてみた。なんだか無性にタバコが吸いたくなったのは、若かりし日の行動がよみがえってきての衝動だったが、これはやめておきコーヒーをゆっくりと楽しんだ。

 

大盛りの100円を含んで会計930円は決して安くはないが、タイムトラベルの旅行代金込みと思えばいい。なんてことはないランチタイムが充実した時間になったのは、長く生きてきたことの恩恵ともいえるな。

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