イベントにて考える。

〆切と戦う日々が続いているまっただ中、束の間の仮眠を取り寝静まった編集部を後にして千葉県の銚子へと向かった。今日は得意のバイクイベントの仕事で、例によって司会進行をつとめたのだ。

会場に到着して目に飛び込んできたのは、被災の爪痕だった。そう、東北に比べると波の高さも被災者の数も小さいかもしれないが、それは相対的な話であって、千葉県にも甚大な被害が出ていたのである。ここは大学のキャンパスにある施設で、波は5〜6メートルくらい上がったそうだ。そして被害はそれだけでなく、あの日を境に観光客がパタッとこなくなってしまったとのこと。週末ともなれば、海産物センターには何台もの大型バスが訪れ、宿泊施設は家族連れであふれていた。銚子といえば高い漁獲高を誇り、新鮮なうまい魚が安く食べられるという、絶対的信用のブランド地だった。観光協会の皆さんは懸命にピーアールを繰り返していた。

観光客は来なくてもバイク乗りは次々とやって来る。1000台を軽く超えた色とりどりのバイクに「久しぶりに人があふれている気がします」との感謝の言葉はちょっと照れくさいながらも、イベントというのは人の笑顔を生むものなんだなと再確認した。来たライダーも迎える側もみんなハッピーになれる。『昭和40年男』も、こうした社会にわずかながらでも役立てる、笑顔が連鎖するようなイベントを打ちたいものだ。

イベントってやつは、わざわざそこへ足を運んで来てくれた期待へのアンサーがコンテンツであり、それが共感だったり意外性、驚きといった心の起伏を生み出す。エンターテインメントってやつだね。そうして今度は受けた側の連鎖が力になって舞台へ届き、だんだんと押し引きになって大きなうねりを生み出して楽しくなる。僕の仕切っているイベントでは、大仕掛けのコンテンツを次々と打ち込んでいるわけでないけど、そよ風程度は起こすようにいつも努力しているつもりだ。

たとえば今日のイベントでは、この会場にバイクで来た最も高齢者に送るシルバー賞というのがあって、その方々に舞台へ上がってもらい表彰したり、誕生日を迎えたライダーを祝う。これらを見守っているライダーたちの目がいい。前からいいが、最近スゴくいい。ジャンケン大会で後だしするヤツが減った、声をかけてくれるライダーが増えた、などなど、最近凄く雰囲気が良くなっているのだ。

やっている方としては単純にうれしいことだが、その奥にはイベントのあり方や求められ方がずいぶん変わったのだと、とくに今年は思うことが多い。小規模のバイクイベントでなにを偉そうにと笑ってくれてもけっこうだが、やってるこちらサイドにはひしひしと伝わってくるのだ。1人ひとりのホンのわずかな心の変化でも、1000人以上が積み上がってくるとそこに対峙している僕には大きな変化になってぶつかってくる。表面的にはいい雰囲気と片付けてしまえばいいが、奥には乾きが内包されているように感じてならないのだ。ちょっと頭でっかちな話だけど、だからもっともっとイベントを大切にしていかなければなんて、ふんどしを締めなおして今日を乗り切った。そして今年はあと1本を残すのみ。全力でやっていいイメージで来年に繋げたい。と同時に『昭和40年男』らしいイベントの姿を考えていこうと、ポジティブな自分がいた〆切現場への帰り道だった。

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