冷やしたぬきそばのシーズンイン!!

さあ、この季節の到来だ。美しい、こんなにも美しい冷やしたぬきはなかなかお目にかかれないし、ここを超える冷やしたぬきを僕は知らない。このつぶやきにはちょくちょく登場する、浜松町が誇る創業の老舗そば屋『更科布屋』の一杯だ。

 

温かいのも冷たいのも、僕はたぬきそばが大好きで、普段なら冷やしは5月にキックオフする。そしてその初めとなる1杯は、この老舗そば屋でと決めているのだ。それは当然ながらこの美しさとうまさで、食でも季節の移ろいを楽しむ僕の流儀である。880円とちょっとお高めなのが痛いが、うまさを勘案すればコスパは決して悪くない。雨の日と月曜日はご覧の大盛りが増額なしで、現在は連日大盛り無料キャンペーン中である。おっさんに楽しんでいただきたい一杯だ。

 

5月は休んでいたからつらかった。早く冷やしたぬきさんと出会いたいのに、他の店でキックオフするのが嫌だから昨日まで遅れたのである。やっと営業再開したいつもの店にルンルンと入ると、様子が大きく変わっていた。店主(そばマンガの『そばもん』に登場する)が、体温計を持って出迎えてくれる。ピッと当てて36.1度だった、セーフ。そして手の消毒を促され席に着くと、「おおーっ、これがソーシャルディスタンスかあ」となる。店のセンターが正方形のカウンター席になっているのだが、普段の半分程度に間引かれていた。そしてテーブルの上にあったお茶やそば湯のポットとナプキンが撤去されていた。ふむふむ、ここまでやらねばならないのだな。というか、ここまでやっている店は僕にとって初めてだった。さすが江戸時代から続いている店である。そばというオーソドックスなメニューながら、長く続けるには努力が必要であり、ここのメニューからは老舗にあぐらをかいている姿勢はなく、攻めているメニューがあることから僕は贔屓にしているのだ。そして、こうした徹底した対策もまた努力である。客が去った後のクリーニングの姿もキビキビとしていて清々しい。感動しながら冷やしたぬきをすすり、またこの店が好きになった。

 

遅れに遅れていた大切な儀式を終えて、これでもうどこのそば屋に入ってもオーダーできる。我ながらなんだかめんどくさいやつだとあざ笑いながら、店頭で奮闘する店主にごちそうさまと店を出たのだった。

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