酒場を愛する昭和40年男。

東京昼酒場定点観測している書店で、ずっと減り続けているのがぴあが出した『東京昼酒場100』だ。発売が10月の末だからもう4ヵ月近く並んでいて、減っては山積みが繰り返されているのを何度か目撃している。同業者としてはなんともうらやましい。

僕はこの素晴らしい本には手を出さない。昼呑みってのは人生最高の贅沢であり、表紙のキャッチになっている“せっかく酔うなら昼間から…”なんて、日常にするのはまずいでしょ(笑)。何度も立ち読みしてはレジに運ばない僕で、申し訳ありませんぴあさん。右隣の『40歳からの東京酒場』も11月の発売からずいぶん長く並んでいて、こちらも同じく何度か立ち読みさせてもらっている。申し訳ありません、散歩の達人さん。

ご周知の通り紙媒体の市場は厳しさを増す一方だが、酒場も同じく将来展望は苦しい。少子化に加え、若者のアルコール離れは身近でも強く感じる。僕らは懸命に背伸びして酒呑みになろうとしたものだが、昨今の若者たちにはそんなもん無駄でしかないと考える者も少なくない。ノミニケーションなんて言葉は、現在ではアルコールハラスメントに変わった時代だ。こんな素晴らしい本が書店でブイブイ言わせているのは、もう後わずかだろうか?

だがしかし、若者の酒呑みがいないかといえばそんなことはない。先日、日曜日の昼下がりに打ち合わせでファミレスに入ると、多くの若者たちが昼呑みしていた。その数、客の半数以上を占めていた。もっとも若者の街だったからどこでもという現象ではなかろうが、思わず打ち合わせ相手に「これはスゴイ。今の若者たちは昼のみが常識化している」なんて吠えた僕だった。だが、よくよく考えるとここは酒場じゃない。呑むならそれなりの雰囲気がある酒場へ行けっ!!

渋い居酒屋や街のバーにほとんど若者はいない。大好きだったバンドマンガの『気分はグルービー』の主人公たちは高校生で、居酒屋やバーでバシバシ呑んでいた。このマンガだけでなく、若者が背伸びしている姿は多く描かれていて、それに憧れて吐きながら呑んだバカモノたちが俺たち世代だ。大人たちにご迷惑をかけながら酒場のルールや粋ってヤツを学んだ。まっ、今の世相ではそいつは無理だから、将来ますます酒場は苦しくなるだろう。ガキが少なくなった酒場は居心地がいいものの、さみしくないといえばウソになる。「おい、わけえの。一杯おごってやるよ」なんて見知らぬおっさんに言われたセリフを使いたい。当時の恩返しがしたいものだ。

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