12月に聴きたいアルバム “ザ・ベストテン” 。柳ジョージ&レイニーウッド『1981.12.19 Live at Budokan』。

柳ジョージ&レイニーウッド 1981.12.19 武道館師走にふさわしいアルバムを10枚セレクトして、不定期連載でご紹介している。ここまでにザ・バンドスティングブルース・スプリングスティーン、そして昨日ご紹介したボズ・スキャッグスとまったくとっ散らかったラインナップなものの、こんな雑食具合が昭和40年男ならではなのだと胸を張る。そしてさらにとっ散らかせたいというわけではないが、今日は日本を代表してジョーやんを登場させる。タイトルを見ていただければわかるとおり31年前の今日、武道館で行なわれたライブの模様を収録したアルバムで、この日をもって彼らは解散した。最後を飾る名演ばかりのライブアルバムなのだ。

余談ながら1981年といえば、連載企画の『夢、あふれていた俺たちの時代』で取り上げている年で、今まさにその空気とふれているところである。あれほどのいい時代に解散とは、もったいなかったと思ってしまうが…。

ここまで紹介してきた4枚とは異なり、すべての昭和40年男たち(これまでの4枚も100%とは言わんがかなり自信アリ)の師走にしっくりくるかといえば、少々無理があるのをご容赦いただきたい。ライブアルバムであり、ましてや解散の熱すぎる想いが入り込んでの仕上がりだ。だが熱すぎるとはいえ、解散の幕を綴じていく感じと暮れのなんとなくの寂しい感じはピッタリとシンクロする。とくに最終曲となる『プリズナー』は、彼らの曲の中で僕がもっとも愛する1曲であり、1年を終える直前に聴くのにバッチリであり、人間としていろんなことを考えさせてくれる。

この頃日本のロックは、大きな成長を遂げているまっただ中だった。自分たちには関係ないよとでも言いたかったのか、彼らは一足先に最前線から去っていった。やがて時代は、ジョーやんのようなカッチョいい存在のシンガーやバンドたちを、華美な方向へと誘っていった。日本のシーンの成熟には必要だったのかもしれないが、たとえばサウス・トウ・サウスのキー坊(上田正樹さん)が歌った『悲しい色やね』のように、信じがたい転身が多く見られるようになっていった。昨日紹介したボズ・スキャッグスに代表されるAORの影響が色濃くあり、音楽が完全にマーケティングの時代に入っていった結果だ。ジョーやんとレイニーウッドの面々はまるでそれを察知していたかのように、また自分のペースの信念だけを尊重するかのようにソロ活動へと身を移していった。その記念碑となるアルバムが『1981.12.19 Live at Budokan』なのだ。

柳ジョージ&レイニーウッド解散の日から30年のときを経て、去年の今日『1981.12.19 THE LAST TUNE LIVE AT BUDOKAN 完全盤』がリリースされた。現在ではこちらの方が入手しやすいだろう。かつてのベストセレクト(全30曲中9曲)よりもゆったりとした空気感が漂っていて、師走らしさを楽しむならむしろコチラの方がいいかもしれない。だがこの発売に至ったのは、去年の10月にジョーやんがこの世を去ったからで、追悼の意味で完全収録バージョンが解散のメモリアルデイにリリースされたのだ。今宵、深酒で聴くファンが多いことだろうが、ファンのためだけにこの伝説のライブがあるわけじゃないと、自信を持っておススメする。

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