エアロスミスの新譜『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION』を聴いたぞ。

エアロスミス・ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション前作『JUST PUSH PLAY』以来、11年ぶりのオリジナルアルバム、『ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション』が、先週リリースとなった。本誌最新号でも紹介企画を組み、音楽雑誌業界で活躍が長い編集部の川俣による解説を掲載したが、ここで僕の感想なんかも述べさせていただこう。

中学生の頃からずっと好きだったエアロスミスだが、11年前のオリジナルアルバム『JUST PUSH PLAY』で少し心が離れてしまった。その辺はこの最新作を聴く以前にこんな愚痴を入れながら書いた。『JUST PUSH PLAY』をリリースする以前の、映画『アルマゲドン』の主題歌で大ヒット曲となった『ミス・ア・シング』に大いなる違和感を感じた。こんなポップスソングはエアロじゃねえと。でもまあ映画の主題歌だし仕方ないよなと、大人の理解を示し『JUST PUSH PLAY』を購入すると、甘ったるさが強くなっていた。とくにシングルカットされた『ジェイディッド』は、『ミス・ア・シング』と並び最悪だと思った。コレあくまで僕の偏った意見であり、一般的にはこの2曲によってエアロは新しいファンをつかんだり、ヒットを記録したのだから結果だけ見たらよいことだろう。そもそもスティーブンは秀逸なメロディメーカーであり、ポップセンスあふれる人だから放っておけばものすごく甘くなっていく。それを彼自身の中にあるヘビィロック魂と、ジョーの牽制がありうまくバランスされてすばらしい世界を作り上げてきた。そのギリギリの一線からはみ出てしまった作品が『JUST PUSH PLAY』だった。

だから今回のアルバムはすごく心配だった。前作同様、いやもしもエスカレートしたら完全に僕の中から現役のエアロが消滅すると思っていた。「昔のエアロはよかったよ~」と、遠くを見るような目で語る爺さんな自分になることさえ連想していた。ところが、完全なる杞憂だった。エアロサウンド健在なリだと、堂々と宣言しよう。甘ったるい曲が無いわけでないが、『JUST PUSH PLAY』以前のようにキチンとバランスされているから、作品としてはエアロらしいピリッとしまったものになっている。『ウォーク・ディス・ウエイ』や『バック・イン・ザ・サドル』を彷彿とさせる、ファンキーナンバーが随所に入り、R&B色の濃いナンバーもしっかりと入っていて、カッチョよさが全面にあふれている。

この歳になった僕らが見習うべきことは、作品への執着だ。1曲に入っているアイデアの量がハンパでない。並のバンドなら3曲分くらいのネタがどっちゃりと詰まって、それをまとめあげて各々短い1曲に仕上げているのは、センスだけでなく執着である。以前、あるシンガーのインタビューで、アマチュアでやっていた曲を2曲のいいとこ取りのミックスで1曲にする作業を、デビューに向けて強いられたと聞いた。今回の新譜に収められた各曲は、2曲どころじゃなくそれ以上だ。11年分のアイデアをすべて詰め込んだとのPRをしても、きっと疑わないだろう。60歳を過ぎてこのような集中力を感じるだけでも価値があるってもんだ。オススメですぞ。

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