魔物がうろつく、鈴鹿8耐レポート。(2)

昨日のつづきで、先週末のレースについて綴っている。

土曜日早朝に鈴鹿入りして、まず鶴田のピットを訪ねるとマシンの仕上がりはすこぶるよいとのことだった。木金と2日間に渡って行なわれた予選も6位と、言葉どおりのいい位置にいる。全体を見てもまさに順当な順位で、鶴田の率いる『エヴァRT初号機トリックスター』チームの下馬評どおりの順位だ。今回のレースは、ホンダ系の2チームとスズキ系の1チームが飛び抜けていい状態であり、つづいて鶴田のチームを含めてそこに一歩及ばずながら狙えるというチームが5~6チームと、さらにもう一段劣るものの上位を狙えるチームがいくつかつづいているといったエントリーで、それ以外は完走狙いで合わせて約60のエントリーだった。順当にいけば表彰台は優勝候補の3チームで独占するはずで、去年はその展開でこの3チームのトップ争いとなり、そのまま表彰台に立った。3チームだけの争いとなり、おもしろいとはいい難い展開の去年のレースだった。だがこれは極めて珍しいパターンで、耐久で優勝候補チームがすべてノントラブルのまま走ったのは僕の取材歴で初めてだったかもしれない。それほど波乱に満ちたレースになるのが『鈴鹿8耐』だ。そして消極的な話に捉えられるかもしれないが、鶴田のチームの武器はトラブルの可能性が低いことだ。ベテランのライダーたちをそろえているから転倒の心配が低いことと、百戦錬磨のチームゆえマシントラブルが少ない。もっとも魔物がウジャウジャといる鈴鹿だから何があるかわからないが、安定感が武器であることは間違いない。土曜日の取材を終えた夜食時に、うちが主戦場にしているバイク関連雑誌の編集部との予想で、僕は鶴田のチームが相当いい順位にいくと話した。ズバリ表彰台だと。

大舞台にいる鶴田の姿を遠くから見て、静かにエールを送った。いつもそうなのだが、レース当日はできるだけわずらわせたくなく、声をかけないようにしている。やがてスタートの時間が近づき、僕は撮影場所のシケインに陣取りレース開始を待った。強豪3チームと、そこに絡む筆頭であるヤマハチームが引っ張る展開でレースが始まった。鶴田のチームは予選の順位を下げてのスタートとなってしまった。周回を繰り返していくが、あまり調子が出ない様子に見えてしまう。10番前後を走りトップ集団からはドンドン離されていった。素人ながら僕の見立てでは、序盤はそれほど積極的に前を行かなくとも6番手前後をあまりトップから離されないようにいき、後半勝負とは考えていたが、それにしてもドンドン離されていった。

大荒れとなる口火を切ったのは、トップを走るヤマハがわずか18周目にして大クラッシュしてしまったことから始まった。鶴田の率いる『エヴァRT初号機トリックスター』は一時は10位以下に順位を下げた。だが中盤、終盤とドンドン鶴田の前を行くチームが転倒やマシントラブルで順位を大きく下げたりリタイヤしていく。優勝候補といわれた3チームのうち5時間過ぎに一台が転倒、さらに6時間半を過ぎたところでもう一台も転倒してしまう。そこに準ずる鶴田の対抗馬たちも次々と消えていくなか、タメ年監督は冷静だった。虎視眈々とラップを重ね、読みどおりの後半勝負に持ち込み表彰台を射程距離に入れたと思ったのは7時間を過ぎてだった。残念ながらその時点で1位と2位は射程外といっていいほど離されていたが、世界転戦する外人ペアのヤマハチームと表彰台争いになった。ハラハラしながら見守った。(つづく)

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