最初はSっ!!

写真はつい先日、今日のタイトルで跳ねていた男、渡辺一樹さんだ。一昨日の は、全日本ロードレースのお仕事で鈴鹿サーキットに出かけた。レースの取材は、ライダーたちの真剣さを見られて気が引き締まる。だってね、命をかけている競技だもの。

 

で、今日のタイトルについて説明しよう。僕のライフワークと言っていいだろう「ラブ・ジ・アース」海岸清掃イベントを前週の日曜日に行った。清掃活動後は、集まってくださった方々への感謝を込めて、ささやかながらイベントを開催する。この活動は、ホンダ・ヤマハ・スズキの協力を得ていて、ステージイベント用に賞品を提供してくださる。さらにバイク跨りコーナーを作ってくださる。さらにさらに、ステージを盛り上げるトークショーのためにゲストを派遣してくださるのだ、感謝。協賛いただいた賞品をかけた、ジャンケン大会が最終の催しになり、ここでもゲストライダーたちが登場するわけだが、最初はグーっの代わりにそれぞれのメーカーの形を作る。ホンダなら最初は「Hっ」と両手両足で “H” の形を作る。さほど難しくないことは想像できるだろう。「Yっ」も西城秀樹さんよろしくHよりも簡単だ。が、今回は度肝を抜かれた。トライアルライダーの黒山健一さんがヤマハよりのゲストだったわけだが、片足開脚立ちで “Y” を作る離れ業を演じたのだ。何百人もの来場者とのジャンケンなのだから、何度も何度も繰り返す。心配する僕をよそに「関節が柔らかくなってきたぞー」と、見事にこなしきったのだった。

 

そして「Sっ」だ。正面に対して横向きになり、飛び上がって手足を曲げて作る。想像できたかな? 今回はYが見事過ぎたが、それは離れ業である。対してSはと~っても恥ずかしい。これをスズキのゲストで、全日本ロードレース年間ランキング2位の写真の男に強いたわけだ。

 

長い前置きになってしまったが、その笑いを作った男がレース直前はこの表情である。つい1週間前はステージ上で冗談を言い合っていたのに、とても声をかけられる雰囲気でないほどのこの険しい表情だった。今回の取材では、ついに言葉を交わすことができなかった。繰り返すが、ほんの1週間前のステージをご覧になった方には信じられないだろう。

 

シリーズチャンピオンはヤマハで、メーカーの冠を背負ったワークスと呼ばれるチームで、渡辺さんはプライベーターである。そこに果敢に攻めきり、多くの見せ場を作ったものの3レースとも2位という結果だった。とくに最終戦は見たことのないようなデッドヒートを演じたのだが、惜しくもわずかに届かなかった。予算規模で言えば雲泥の差があるのに、そのコストを考えたらあっぱれである。「最初はSっ!!」とみなさんを笑わせた以上に、大きな感動を作った見事な千秋楽だった。
 

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