みんな大好き昭和カレー。

江戸の3大そば屋ブランドが「更級」「砂場」そして「やぶ」だ。この中で、江戸時代に庶民が愛したのが「やぶ」だと言われる。「神田やぶそば」を中心にして結成されたのれん集団が「藪睦会」で、会社の近くの芝商店街にある「やぶ砂」さんも加盟している、うまいそばを食わせる店だ。が、ここで大人気なのがご覧のカレーライス (750円) でおそらく人気ナンバーワンメニューである。

 

なんの仕掛けもない。辛味は強くなく、肉とじゃがいもと玉ねぎがやや小さめの同サイズに感じられる。これをぜひ食いに行くべきだと書いて、もしもを信じてもらえた人が10人いたとしたら、おそらく8人は僕を叱るだろう (笑) 。特筆するような長所を何も感じられないのだ。無理に挙げるとしたら、前述した小さめサイズの3種の具のバランスだろうか。だがなぜここに訪れるおっさんたちはこの一皿をオーダーするのか。それは “普通” だからだ。

 

デジタル・ネット社会によるところが大きい。カレーの話に持ち出すのは大袈裟だと言うなかれ、現代は刺激的であることが有益に働く場面が多くなった。一方で、コンプライアンス・ハラスメント社会は萎縮した仕事を要求される。そんなアンバランスな日々を過ごしている俺たち世代にとって、普通であることは心の拠り所になったりするのだろう。他方、昭和にそれを求め、安らぎにするのも気持ちの方向性としてはあたり前田のクラッカーである。

 

ガキの頃家で食った普通のカレーだ。母ちゃんが忙しい中で作ったカレーを思い出させてくれる。その母ちゃんはもうこの世にいないかもしれない。いても介護が必要なのかもしれない。おっさんたちに元気な頃の母ちゃんを思い出させてくれるのが、この一皿だとすればガッテンガッテンだ。でもね、そこだけを求めていると老け込んじまうから、さあがんばろうぜと世に打って出る努力をしている。この一皿からそんな力をもらおうとしているおっさんたちなんだと、不思議なシンパシーを抱いたりできる昭和なそば屋だ。うまさでなく、このシンパシーに興味がある方は、平日昼時のここへ行くことをオススメする。って、よっぽどでなければ足は向きませんな (笑) 。
 

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