ディック・セント・ニコラウスの『マジック』。

昨日のストーリーの番外編といえばいいかな。昨日はネタを伏せておいたが、この1曲だけは語らせてくれ。タイトルとなっているディック・セント・ニコラウスの『マジック』についてだ。昨日綴ったとおりの偶然が呼んだストーリーはまだ続いていて、CDを楽しんでいた終盤に盛り上がりを見せたのである。

2枚組に収録されたのはじつに38曲にも及び、名曲の数々に舌鼓(!?)を打ちまくりながら聴き込んだ。2枚目の17曲目、頭から数えて36曲目のイントロが流れた瞬間、震えるような気分を味わった。長年会いたかった曲に巡り会えたのだから。この曲との出会いは、中学時代の想い出話でチョクチョク出てくる『ダイヤトーン・ポップスベストテン』でランクインして、記憶に留めていた楽曲だった。ボチボチのヒットで物悲しいメロディはしっかりと残っていたが、取り立てて夢中になるようなミュージシャンでもなかった。

さらに話はヘンテコな方へと展開するが、電気屋に育った僕は店の手伝いをよくさせられた。クーラー取り付けがピークを迎えていたある日、大きな家の個室に取り付けがあった。ドキドキするほど女の子らしい四畳半ほどの部屋で、白い家具とステレオ、壁にはキッスのポスターが貼ってあった。そして中学生の僕の目を釘付けにしたのはエレキギターとアンプだった。こんな部屋に女の子が暮らしていると思うと、金持ちってヤツは世の中に本当にいるのだと思った。

強く記憶に残ったのがステレオの上に無造作に置かれた『マジック』のシングル盤で、次々に音楽を吸収していた僕には記憶から消えかけていた曲だった。おおっ、こんないい暮らしをしてエレキギター弾きまくって(いるかはわからんが)いる、カワイイ(に違いない)お姉様が好きな曲なんだと、妙な興奮を覚えたのだ。この曲を知っていた中坊の僕は、きっと大学生くらいのお姉様と気持ちが繋がったと信じ(バカだ)、永遠にこの曲を胸に刻んだのだった。だがひとつ重大な過ちを犯した。どうしてそうなってしまったのか、“ジャック”・セント・ニコラウスの『マジック』と記憶してしまったのだ。

曲の記憶だけは鮮明なままやがて高校生に成長した僕は、お姉様と繋がったレコードを買おうと中古レコード店を探した。店員さんにジャック・セント・ニコラウスの『マジック』と聞いて回ったが、皆さん知らないとのことだった。僕の心の中にずっとしまわれたまま、でもたまに口ずさんでしまう心の名曲となりやがて幻となった。だがつい先日、僕は脳天をぶっ叩かれたのだ。イントロが流れた瞬間は、あれっ?これはよく知っているけどなんだっけ?と思ったが、Aメロに入ると興奮に変わった。長年探し続けてきた曲は、これにて一件落着となった。

昨日から続けてきた偶然の連鎖はこうして締めくくられたことになる。DJ OSSHYさん、ありがとう。あなたの選曲のおかげで、僕は中学時代の幻になりかけていた想い出を、1つ取り戻しました。ところでみなさん、この曲覚えていましたか?

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