祭のおもひで。

6月に入ったのを象徴するように、今日の東京はどんよりと曇っている。12ヶ月の中で最も人気のない月だろうが、お米の国に住む我々にとっては重要な月ですな。旧暦では夏となる月で、かつては雨乞いや豊作祈念の祭礼が盛んに行われ、今も脈々と受け継がれているものも多い。僕の生まれた東京荒川区では、6月第一の土日に天王祭(豊作祈念ではないが)が行われる。氏子61を誇る素盞雄神社がぶちかますすばらしい祭りで、とくに今年は3年に一度の本祭で、本社神輿はこのときにしか登場しないから必見ですぞ。我々が誇りにしている本社神輿は担ぎ棒が2本だけのもので、コイツを左右に目一杯倒して振る姿はそれは見事で、見たことのない人はおそらくビックリすることだろう。さらに61の氏子町内会はそれぞれのエリアを練り歩く神輿と山車を出動させる。幼少は山車を引き、ある程度の身長になると子供神輿を担ぐ。そしていつか大人神輿を担ぐことと、3年に一度の本社神輿を担ぐことを夢見て育つのだ。僕は結婚と同時に荒川区から出てしまい、残念ながら夢は叶わなかった。

思い出すのは、最も夢中になった小学生の頃のことだ。土曜日の学校の授業なんてまったく聞いちゃいなくて、これから始まる祭でソワソワしっぱなしだった。授業が終ると教師から「気合い入れて担いで来い」と、子供たちを励ましながら普段の土曜日よりさっさと帰してくれる。家に着くと飲み込むように昼飯をかっ込み、手ぬぐいを持って神輿へと一目散に走り、自分の担ぐ場所を確保するのだ。町内をぐるりと一周して帰ってくると、山盛りのお菓子がもらえて、これまた楽しみだった。1回ごとに肩の痛みは増していくが、同時に気合いも入っていく。日曜の午後はまた1年この楽しみがないのかと、祭を終えたくない気持ちでいっぱいになりながら懸命に声を出すのだ。清々しい気持ちで夕食となり、お袋はごちそうで労ってくれるのだった。金曜の夜からワサワサしていた街も、徐々に静まっていくなんとも寂しい気分を味わい、疲れ果てた夜はグッスリと深い眠りに就く。翌日の教室は腫れた肩を自慢し合いながら、各自の神輿武勇伝を発表するのだった。

僕が今住んでいる街には残念ながら祭がない。いや、むしろ祭のある街の方が少ないのかもしれないから、僕が体験したような感覚を持てない子供は多いはずだ。だったらせめて子供を連れて見物に出かけて、解説なんかしてあげたらいかがだろう? 日比谷線の三ノ輪からチンチン電車に乗ってまずは祭見物をして、荒川遊園のジェックコースターを楽しんで、飛鳥山公園で滑り台を降りてくる子供を眺めながらビールを呑む。荒川育ちの僕がオススメする完璧なコースですよ、お父さん!!

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2件のコメント

  1. せがれと行こうかなあ。三ノ輪チンチンと荒川遊園は基本すよね。せがれが小さいころよく連れていった。素盞雄さまはこないだ資料探しの道すがら、千住大橋駅から歩いて通りました。

    • いってらっしゃい。度肝抜かしますぜ!!

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