【懐かしの名盤】ザ・バンド『Music From Big Pink/ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』(13/13)

不定期連載企画、懐かしの名盤ジャンジャカジャーンのシリーズ第9弾は、ザ・バンドでお送りしている。いやはや、長い話におつきあいいただき感謝感激だ。本日で終わりにする。

93年の来日公演でもっとも辛かったことが、リチャード・マニュエルがいなかったことだった。86年の3月に自ら命を絶ってしまったのだ。ザ・バンドには3人のすばらしいヴォーカリストがいたが、リチャードこそがメインだとするファンが多く、僕もその1人である。彼の歌声がザ・バンドにとってとてつもなく大きかったことを知った来日公演だった。

逝ってしまってからずいぶんの時間を経て『Whispering Pines/ウィスパリング・パインズ~ライヴ』というアルバムがリリースされた。ザ・バンドの名曲の数々をエレキピアノで歌ったライブアルバムで、リック・ダンゴと再結成時にギターで参加した、ジム・ウィーダーがサポートしている。このアルバムはなんといっても“歌”のアルバムで、1枚丸ごと彼の声にドップリと浸れるのという点において、ファンにはたまらないアルバムであり、涙なくして聴きとおせない1枚でもある。会場となっているのは小さなクラブとクレジットされていて、その狭さがわかる録音なのがまたなんとも切ない。ただ、リチャードの歌はすばらしく、往年の力強さはないものの、泣きの歌にはむしろ磨きがかかったように響き渡る。

99年には、リックダンゴも逝ってしまい、再結成した彼らもこれ以降活動を休止したままだ。そして…、僕がザ・バンドについて書き始めた4月15日の直後、名ドラマーにして、やはり最高のシンガーの1人、リヴォン・ヘルムが逝ってしまった。この悲しい知らせに、すべてのアルバムを聴き、『ラスト・ワルツ』を観て『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』を何度も聴いた。それ以来、不定期で続けてきた日々だった。ファンにとっていつかもう一度、すべてのわだかまりを捨ててリヴォンとロビーが同じステージに立ちことを夢見てきたが、とうとうかなわかった。

ザ・バンド編の最後となる今日、あらためてリヴォンに礼を述べたい。いいビートと歌をたくさん届けてくれてありがとう。また、僕の中にあまりにも大きな影響を残した、ザ・バンドを結成してくれてありがとう。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で