いつまでも宝物! なんでもありの舞台で暴れまわる SDガンダムの魅力。【期間限定公開】

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好評発売中 の『昭和50年男』本誌 2022年 11月号/vol.019 に掲載のインタビュー記事を Web版として特別公開! 2023年 1月27日 (金) までの期間限定でお届けします。
 


 
“SDガンダムの宝物感を届けたい” が、デザインの骨子。

 
低頭身で表現された、かわいらしくカッコいいキャラクターデザインと自由な世界観が人気のSDガンダム。2021年には『SDガンダムワールド ヒーローズ』が世界配信されるなど、その人気はますます加熱している。「SDガンダム」最新シリーズでSDデザインを担当する宮内利尚氏に、作品やキャラクターの魅力を聞いた。

( 取材・文: サデスパー堀野 / 撮影: 吉場正和 )
 
 
昭和50年男の少年期、1980年代に大ブームとなったもののひとつに、「SDガンダム」(バンダイ。現・BANDAI SPIRITS) がある。もともと玩具界でディフォルメデザインというのは定着しつつあったが ’84年以降のファミコンブームによって、ゲーム描画的な二頭身サイズのデザインが一気に浸透する時代に入る。バンダイは、それまでにもロボットをディフォルメ化した商品を発売していたが、より極端なディフォルメをした “スーパーディフォルメ” 、つまりSDガンダムというブランドをスタートさせ、’85年にガシャポンの塩ビ人形として初めて商品を発売する。同時代には大ヒットした「ビックリマン」(ロッテ) シールも登場しており、子供たちの周りは一気に二頭身キャラブームとなっていく。

そして時代が経つにつれ、SDガンダムはより自由な発想で羽ばたくようになり、日本の戦国時代ベースの『SD戦国伝』(※1) 、中世欧州ファンタジーベースの『SDガンダム外伝』(※2) 、生物的な『ガンドランダー』(※3) など、どんどん世界観もキャラも増えていき、本家ガンダムとは違った魅力をもつ、親しみやすいカッコかわいいキャラとして、当時の子供たちを虜 (とりこ) にしていった。商品も、ガシャポンだけでなく、カードダス、プラモデルの「BB戦士」、玩具の「元祖SDガンダム」と増え続け、さらには駄菓子屋の引き物や食玩、オマケシール・カードなどもあって、子供たちの周りは、もうSDガンダムだらけだったのである。
 
 
※1 … 鎧武者姿のガンダムらが主人公の物語。
    1989年にバンダイが『コミックボンボン』とタイアップ企画を始めた。

※2 … 騎士ガンダムらを主人公とする、西洋ファンタジー的要素をもつ物語。
    カードダスを中心に展開された。

※3 … 先史時代や古代文明をモデルとした世界を舞台にする物語。
    キャラクターデザインの特徴として、身体に生物的な角のような部位がある。
 
 

■SDガンダム大好き少年がメカデザイナーへ

『SDガンダムワールド ヒーローズ』

“悟空インパルスガンダム” と名乗る記憶喪失の少年と、劉備ユニコーンガンダム、諸葛亮フリーダムガンダムが、世界の危機を救うため、旅に出る。悟空は各ワールドの英雄たちと出会い、何を思うのか。世界の英雄たちによる新たな物語!!
https://sd-gundam-world.net/heroes/

物語の続編となる新規描き下ろし小説が封入特典となる Blu-ray コレクションボックスは、2023年1月27日発売。5万5,000円。
https://a-onstore.jp/shop/sd-gundam-world/

 
現在『SDガンダムワールド ヒーローズ』でSDデザインを手がける 宮内利尚 (としなお) 氏も、幼少期にそんなSDガンダムブームにぶち当たり、魅了されたひとりだ。
 
「自分が子供の頃って、SDガンダムってどこに行ってもあったんですよ。街にはオモチャ屋さん、駄菓子屋さんがあって、ガシャポン回せばガン消しが出て、カードダスがあって、駄菓子屋さんでは引き物とかも売ってました。『コミックボンボン』(講談社) も毎月好きで読んでいて、日常の一部にもうSDガンダムが存在していたから、気づいたら好きになっていたという感じでしたね」

そんなSDガンダム大好き少年・宮内氏は、特に黄金神スペリオルカイザー (「新SDガンダム外伝 黄金神話」) に思い入れがあると言う。スペリオルカイザーは、SDガンダムなのにルール破りのリアル頭身という衝撃が話題となったキャラで、宮内氏もそこに魅了されたのだが、それだけでは事が収まらなかった。

「当時発売された『元祖SDガンダム』の商品を、欲しかったけど手に入れることができなかったんですよ。いつか欲しいって思っていたけれど、子供にとって高額商品だったのでなかなか買えるタイミングがなくて、どんどん自分のなかで神格化していったんです。月日は経ち、自分は原型師もやるようになったので、だったらいっそ、自分の頭の中にある “究極にカッコいいスペリオルカイザー” をフルスクラッチで立体化しようということで、ガレージキットイベントの『キャラホビ』(※4) に持っていったんです。そしたらすごく評価していただいて、それからいろんな人との出会いもあり、人生のターニングポイントのひとつになりました」

その後 “元祖” のスペリオルカイザーは無事買えたそうだが、このフルスクラッチのスペリオルカイザーがきっかけとなった出会い、めぐり合わせによって、宮内氏は今ではSDガンダムのデザインに関わるようになった。

「SDガンダムが好きで、昔からずっと関わりたいという思いがあったので、参加することになった時は、とにかくがんばろうという気持ちが強くありました。もともとは『三国創傑伝』(※5) のゴの軍勢をデザインするっていうことだったんですけど、(習慣としている) 夜のジョギング中にアイデアを考えて、翌朝ラフイラストを描いて関係者に一斉に送信したりと、とにかく自らどんどんアピールしていきました。その熱意を汲んでいただいたのか、いつのまにか『宮内デザインで全部やったらいいんじゃないの』という流れになり、今ではシリーズすべてを任せていただいています」

SDガンダム愛、好きの気持ち、熱意が伝わったことで、まさに夢が叶った格好と言える。
 
 
※4 … バンダイとホビージャパンが共催するガレージキットイベント。

※5 …『SDガンダムワールド 三国創傑伝』は2019年から展開されているシリーズ。
     劉備ユニコーンガンダムなど『三国志』をモチーフとしたキャラクターが登場する。
 

©創通・サンライズ
 
 
(次ページへ続く → 世界観の広さ、カッコかわいさは不変の魅力。 [2/2] )

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