【懐かしの名盤】ザ・バンド『Music From Big Pink/ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』(3/13)

不定期連載企画、懐かしの名盤ジャンジャカジャーンのシリーズ第9弾は、ザ・バンドでお送りしている。1976年に事実上解散しているから、リアルタイムで聴いていたという昭和40年男は稀だろう。素晴らしい功績を持つスーパーバンドだが、いぶし銀なサウンドのためか国内での評価が低すぎるように感じてならない。もしも聴いたことがなかったら、今すぐチェックしてみてほしい。40年以上前のデビューとは思えない素晴らしい世界を知ることになる。

ザ・バンドがどんなバンドかを理解するには昨日も軽くふれたが、ロニー・ホーキンスのバックバンドとして活動が始まったことがまずあげられる。ド迫力のロックンロールシンガーで、ノリのよい小気味いいサウンドが似合うタイプだ。リハーサルを繰り返しながら、そうした演奏スタイルをつくっていったことが、ザ・バンド(当時はまだこのバンド名を名乗っていないが)のファーストステップだ。

やがてロニーから離れてしばらくクレイジーな毎日のどさ回り期間があり、この間に人間的にも音楽的にも“いなたい”感じが加わったのだと推測している。映画『ブルース・ブラザース』で、カントリーを待つ客でごった返すライブハウスで演奏を始めると大ブーイングとなり、突如『ローハイド』を歌い始めるあの最高のシーンが、そのまま彼らのどさ回り時代にあったような気がしてならない。音楽的な幅がものすごく広くて、それこそカントリーやデキシーサウンドからブルース、ハードなナンバーやロックンロールもガツンとこなせるのだから、きっとどんなブーイングにあっても乗り切れたはずだ。

ザ・バンドの音楽にはそんな器用さがあって、彼らが活躍した当時のアメリカのバンドの中にあっては完成度が高すぎるほど、表面的にはインテリジェントな音に仕上がっている。だが、聴いている側に嫌みな感じを持たせないのは、不良っぽさと男好みの渋さが散りばめられているからだ。計算されつくした音に、にじみ出てくるような人間臭さが乗っかっているザ・バンドの基本スタイルは、どさ回りによって出来上がった(!?)。悪いことばかりやりながら音楽活動していたセカンドステップを経て、その後の活躍を決定的にするボブ・ディランとの出会いが彼らを待っていたのだった。(つづく)

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