ライブとテクノロジーがもたらした音楽の大変革とは? 大阪万博〜コロナ後までじっくり考察。

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アフターコロナの時代に向けて、耳利きキュレーターの出現を求む

 
そして、2021年となった今。 

“何度もお願いします。不要不急の外出を避けてください”

何度も聞きました。

でも、明けない夜はありません。

さあ、コロナ後の世界に向けてどんな準備が必要なのでしょう?
 


 
コロナ禍でほとんどの文化芸術関係の方は大変な思いをされています。今はデメリットが多く、メリットという点は少ないのですが、配信が一般的になったという点は大きなメリットとなっています。

例えば10代の子たちが音楽をやる時、好き嫌いは別として、ビートルズを知らないなんてことは基本的にあり得ないですよね。どこかで聴いている音じゃないですか。ビートルズが過去のものなら、それを知ることから始め、当然ビートルズを超えるものを模索して自分たちの音楽を表現していこうとなりますよね。

そんな時、ティーンズたちはビートルズの音をさらに深掘りします。つまりは、様々な芸術のジャンルで、デジタル配信が進んだことで作品がアーカイブ化されました、これはとても大きな恩恵です。これから先の世代は意欲があれば過去の作品を資料として視聴できる、学ぶことができる。これは大きな変化であり、大きなメリットとなっています。

よく危機の時は新しい変革が起こると言われますが、本来は、平時からアーカイブ化は進めておくべきであり、音楽の世界ではコロナ以前から比較的進んでいたと感じています。元々の音源がすでにデジタルとなっていたので配信に馴染みやすかったのです。そこに映像を付与するとか、ライブそのものをリアルタイムで配信することで課金制にするなど、取り組みの幅が広がっています。

イベントをきっかけとしてテクノロジーの進化が起こり、アーティストたちの視点がライブへとシフト。ライブネーションのようなビッグカンパニーと結びつき、配信スタイルも定着し、と今日の音楽産業は進展しつつあります。これは産業構造の転換としては正しい選択であったと思うんですけど、課題は未だ残っているのではないでしょうか?

アーティストの発掘・育成には多くの時間と手間をかける必要があり、この役割を従来のレコード会社やレーベルが担っていました。ライブネーションが掲げる戦略は、ライブにおいて相当数の観客動員を見込むことができるアーティストには有効ですが、これからというアーティストの場合は成立しづらいと思えます。育成していくという面をどのように構築していくかを考えていかないと、ただのいいとこ取りで終わってしまう懸念があります。

音楽は聴く人に時間を使わせますよね。二つ、三つの曲を同時に聴くってできないですよね。ということは、アーティストからしてみれば、リスナーの時間を奪い合う勝負となっているのです。その点だけで鑑みるとビッグネームにとっても新人にとっても同じで、フェアなのです。ただし、新人がYouTubeにアップしてアーカイブが整備されていったとしても、我々ユーザーはなかなかそこにたどり着かない。どうしてもすでにアクセス数が多いものが上位に表示されてくるのが現実です。なので、楽曲やアーティストと、我々リスナーをつないでくれる仲介者が必要となってくるのです。

仲介者というものは、過去にも常に存在していたと私は思っています。例えば、FMではディスクジョッキーがいて、クラブではDJがいて、そういう目利きならぬ耳利きがいて、“まだ、これ知られてないけど、すごく面白いよ” って。仲介者がメディアを通して良質な音楽を紹介していくことがないと、辛いのかもと…。

プレイリストの共有という今の文化においても、良質な音楽を紹介してくれる友人がディスクジョッキーであり、DJ的な存在なのでしょう。膨大なアーカイブとなりつつあるYouTubeをはじめ、様々なデジタルメディアにおける、信頼できる耳利きのキュレーター、セレクターの出現が重要なカギとなる!と私は思うのです。

私も、『Active Archipelago』というサイトの『芙蓉/不朽之音楽』という連載でささやかに書いております。今までほとんど聴き返すことのなかった自分のLPレコードやCDのストックの中から、どちらかというとマイナーな存在で、できるだけ多様な地域・文化の音楽から選んで紹介していきたい。この思いで始めてみました。“不要” ではなく、“繊細な美” を花言葉とする “芙蓉”。そして、“不急” ではなく、“不朽” の音楽。ステイホームの中で、いったん立ち止まって、そんな音楽に耳を傾けてみていただきたいと願っています。
 


 
・迫力の音に共感し、音響テクノロジーで、来日ミュージシャンのライブを支えた日比野氏。

・日本の音楽を海外へ伝えるべく力を注いだ内田裕也氏。

・良質な音を広めたFM局のスタッフたち。

・自分たちの音楽性を確信し、ライブで表現したインディーズの面々。

・膨大な量の音楽をアーカイブとして楽しめることを気づかせてくれたインターネット。

・ファンがアーティストに求めるものに反応したマドンナ、プリンス、レディオヘッド。

・まだ知られぬスゴい音楽を見出すキュレーターの出現。

今回、太下先生に考察していただいたことで、上記7つの現象は、そのいずれもが「音楽」そして「アーティスト」の本当の「価値」を我々リスナーが享受した出来事であると、私、Web担当Mは捉えることができました。

だからこそ、そのきっかけともなったライブやイベントよ「止まるな〜!」と切に願うのです。
 


 
■PROFILE 
太下義之/おおしたよしゆき

博士 (芸術学)。文化政策研究者、同志社大学教授、国際日本文化研究センター客員教授、公益財団法人静岡県舞台芸術センター評議員。文化経済学会〈日本〉理事、文化政策学会理事、デジタルアーカイブ学会評議員。東京都芸術文化評議会委員、2025年大阪万博アカデミック・アンバサダー、オリンピック・パラリンピック文化プログラム静岡県推進委員会副委員長、鶴岡市食文化創造都市アドバイザー。

文化芸術 (文学、音楽、美術、写真、演劇、舞踊、メディア芸術、伝統芸能、生活文化、その他の芸術) に関わる政策を研究し、文化芸術の振興に貢献。
 
https://active-archipelago.com
 


 
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