今季初優勝のF1と名車プレリュードの共通項とは? 開発秘話を深掘り!

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いくつもの制約を、むしろ味方につけた独奏曲だった

▲下ふたつが吸気バルブ、上が排気。排気バルブ横に開けられた孔はトーチと呼ばれ、副燃焼室からの火炎が導かれる
▲シングルカム (SOHC) エンジンではロッカーアームによるバルブ駆動が常道だが、マルチバルブでは一層緻密なメカニズムが求められた
▲薄いノーズのためリトラクタブルライトとなったが “場所の制約” はエンジンも同様で、インテーク類や吸気系も刷新された

 そこで川田たちは1本のカムシャフトで吸気×2・排気×1のバルブを、ロッカーアームを介して駆動させる1カム3バルブというメカニズムを編み出した。

「多くのDOHCに見られる、カムがバルブを直接駆動する直押式は構造はシンプルですが、バルブリフト量に限界があってエンジンの性能が出しにくい。シングルカムの利点をむしろ活かし、ロッカーアームを工夫してアタマの軽さとマルチバルブの利点を両立させました」(川田)

「DOHCはシリンダーヘッドが大きく、幅広になってしまいがちですが、これならコンパクトにできます。こんな低いところにエンジンと駆動メカがあり、しかもマルチバルブというセールス上大きな “ウリ” ができたことは言うまでもありません」(山辺)

 この時のノウハウは後に、トゥデイなど軽自動車用の1カム4バルブユニットや1.6リッター4バルブDOHCのZCユニットなどに応用され、ホンダエンジンのアイデンティティを明確にするのに貢献した。

 さて、エンジン本体のヘッド周りは小さくできた。残るはエンジンの上にでっかく鎮座ましますキャブレターである。

「同時期のシティには電子燃料噴射機構であるPGM-FIが搭載されましたが、プレリュードでは確実な技術で確実な結果を手にしたいという観点から、従来のキャブレター方式を採りました。ただし、排出ガス規制に縛られていた先代から大きく改めています。高さを抑えるため空気を上から流すダウンドラフトから横に流すサイドドラフトにし、それまでエンジンの真上にあるのが当たり前だったエアクリーナーを、エンジンルーム内の隙間を縫うように配置しました。キャブそのものはホンダ初期のSシリーズや初代シビックのスポーティ版RSに積んだCV (Constant Velocity=可変流路) 型を2基搭載して、アクセルオンに対するレスポンスを高めています。いわゆるツインキャブを復活させたわけです」(山辺)

「エンジンの全高を下げるならボアストローク比を変えてショートストロークにすれば…とお考えでしょうが、そう簡単にできるものではありません。ボアピッチをいじるとなると、生産ラインの根本的な見直しが必要となりますが、当時のホンダには、プレリュードのラインはひとつしかなく、しかもそのラインをアコードなど複数車種と共有していました。プレリュードだけのためにラインを大幅に変更すると、当然他車にも影響が及び、とんでもない時間とコストがかかってしまうのです。だから、他の部分で工夫してコンパクト化を図るしかなかった」(川田)

 こうしてでき上がったES型エンジンを、LPL (ラージ・プロジェクト・リーダーの略。営業・生産・開発の各部門のPLに指示を出し、機種開発全体をまとめ上げていく当該車種の総責任者のこと) の横山昭允は以下のように語っている。

「このエンジンが今後のホンダ車の行きかた、今後のホンダのエンジンのありかたを示唆するものだと考えてもらっていい。ファッションだけで終わるようなベース・エンジンにしたくなかったのだ。(中略) マルチバルブではなかったがツインカムや4連マルチ気化器に、ホンダ的テクノロジー・イメージを描いているひとは少なくない。つまり今回のプレリュードに、S500、S600、S800のイメージを具現化し、復活させたかった」

(1983年1月・三栄書房発行『別冊モーターファン 新型プレリュードのすべて』より抜粋)

 
(次ページへ続く → 80年代のクルマ作りのあり方を示した名曲 [4/4] )

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