作家7人の自炊代行業者提訴について。

来年1/11発売号の締め切り真っ最中である。年末進行にキリキリ舞いしながらではあるが、気になるニュースについて、少しまとめてみたい。

自炊代行業者2社を、浅田次郎氏、大沢在昌氏、永井豪氏、林真理子氏、東野圭吾氏、弘兼憲史氏、武論尊氏の7名の作家が提訴したことが話題になっている。

自炊とは、書籍を個人で裁断・スキャンしてPDFを始めとする電子データ化する行為の隠語。専用の裁断機やスキャナーを使って電子化することができるようになってきたことから、じわじわと自炊行為が広がっている。背景としては、書籍を保管するスペースを削減するという面で、スマホやタブレットの普及により、ハード面の用意が進んでいる一方で、読みたい本の電子化が進まないことがあげられる。とはいえ、自炊は設備や時間が必要となる。そこで最近では、自炊行為を代行する業者が現れ、その数も100社を越えるなど一定の人気を集めていた。

この行為に危機感を募らせた漫画家や作家、出版7社は、自炊業者100社以上に対し、連名で「今後もスキャン事業を継続するつもりか」「依頼者に私的利用の確認をとっているか」などの質問状を送っている。今回提訴されたのは、この質問に今後もスキャン事業を継続すると答えた2社である。

今回の提訴について、ツイッターやブログでも大きな話題となり、様々な意見が交わされている。なかでも代表的な意見としては、「なぜ読者は、購入した本の使い道までを、作家に指示されなくてはならないのでしょうか」(漫画家・佐藤秀峰氏)というもので、大きな賛同を得ている。一方で、著作権法や芸術・文化に関わる法律・法制度に明るい福井健策弁護士によれば、スキャン代行業は違法にあたる可能性が高いという(記事参照)。法律的な解釈では、個人で私的利用のために購入した書籍を自炊することは違法ではない。これは音楽CDをテープ、MD、MP3、CD-Rなどのカタチにするのと同様だ。しかし、あくまでも購入者自身が行なうことが前提になっているようなのだ。

今回の提訴に異論を唱える根拠としては、なぜ自分でやるのと、代行するのとで、適法だったり違法だったりするのかというところだろう。その感覚は理解できる。つまり法律とユーザー感覚の乖離が大きいというところだろう。一方で、書籍が年々売れなくなってきている昨今、フリーライダー、タダ乗りに危機間を募らせる作家、出版社の気持ちは、雑誌を作っている側にいる者としては理解できなくもない。

ただ、違法か適法かというのは別として、今後のコンテンツビジネスの市場の広がりという点で考えれば、今回の提訴は作家・出版社を含むコンテンツメーカー自身のクビを締める行為になりかねないと思う。ネットという利便性に富んだコンテンツ流通形態が普及していくなかで、テレビや書籍といった従来コンテンツが、これまで通りでいられるはずもない。利用方法を制限するのではなく、もっと書籍やマンガなどのコンテンツを、読者が望むような流通形態にしていくことこそが、作家・出版社の生き残る道だと思うのだが、どうだろうか。今後の動向が非常に気になるところである。みなさんはどう思われますか。

■関連記事リンク
東野圭吾さんら作家7名がスキャン代行業者2社を提訴――その意図/ITmedia
「スキャン代行」はなぜいけない?/YAHOOニュース
自炊代行提訴についての雑感 — 玉井克哉/アゴラ
自炊代行について。/漫画onWeb

◆副編集長:小笠原
年末年始に飲みまくり、食べまくることだけを夢見てひたすら締め切りに勤しむ。

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