原因不明の口の違和感の巻

虫歯や歯槽膿漏でもないのに、なんとなく口の中に違和感がある…50代でそんな症状を抱えている人が増えているそうです。11月11日発売の『昭和40年男』の連載「昭和40年男のための健康講座」では、「知っておきたい歯科心身症の正体」と題して、そんな原因不明の口の中の不調について東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 歯科心身医学分野の豊福 明教授にお話しを伺いました。

そもそも、歯科心身症という言葉自体、あまり聞きなれない病名ですが、ざっくり言えば歯科領域の不定愁訴を総称して”歯科心身症”と呼ばれているそうです。具体的には、歯を治療しても痛みがとれない、特に異常はみられないのに舌がピリピリしたり痺れが続く、義歯の治療後いつまで経っても噛み合わせが合わないように感じる…などなど。こんな不快な症状があるとしたら、それがまさに歯科心身症です。

イラスト:亀井たえこ

 

口の中は敏感な神経のかたまり

日頃あまり意識することはないかもしれませんが、口の中は味覚、触覚、温度等を感知するなど複雑で敏感な神経が集中しているとてもデリケートなゾーンです。神経は脳に情報を伝達し、その情報によって脳は判断するわけですから、原因不明の不調も実は脳機能や末梢神経・中枢神経の不調、精神的な問題などが混在しているのではないかと言われています。これまでは「気のせい」「心の問題」などとされてきた症状にも、「歯科心身症」というれっきとした病気が存在しており、改善の手段があるということです。中高年の女性に多いと言われる歯科心身症ですが、近年男性のSE職、管理職に患者が増えているということで、ストレスも原因のひとつのようです。さまざまな症状のうち代表的なものを以下に6つご紹介します。

【舌痛症】口腔内に異常は見られないのに、舌や口腔粘膜に焼けるような痛みや歯がこすれるような痛み、ピリピリしたしびれなどが3ヶ月以上続く。味覚異常や口腔乾燥感を伴うことが多い

【非定型歯痛】歯に異常がなかったり治療済みだったりしても、3ヶ月以上、慢性的な歯痛が続く。抜歯や抜髄(歯の神経を抜く)などの治療をしても症状が改善しない。非定型顔面痛との併発もみられる

【咬合異常感】歯科矯正やインプラント、義歯の治療などを行ったのにいつまでたっても噛み合わせが合わないと感じる。義歯などを何度調整しても症状が改善しない。全身の不定愁訴を訴えることも

【口腔異常感症】器質的な異常はないのに、口の中が異様にネバネバしたり乾いたりすると感じる。「表現しづらいような不快感」を訴えるケースも。「セネストパチー」とも呼ばれる。男女差は少ない

【口臭症】他人は気にしていないのに、自分の口臭が臭いと思い込んでしまい、対人関係に影響し、仕事や外出に差し支えが出るケース。青年期と40〜50代に発症のピークがある

【歯科治療恐怖症】過去の歯科医に治療がフラッシュバックするなどして、恐怖感から歯科への通院が困難になるようなケースも。先端恐怖症などの各種恐怖症と近縁の病気といえる

脳機能と口腔内の違和感の関連性

上記のうち、咬合異常感については、脳機能の変調が原因ではないかということが脳の画像分析などからも解明されつつあるようです。加齢とともに50代の脳は、知らず知らずのうちにダメージを受けていることも。几帳面で、他人に迷惑をかけたくないなど、昭和40年男世代は特に「がんばりすぎてしまう世代」と言われていますが、豊福教授によると、そのがんばりすぎの結果、睡眠不足に陥り脳に疲労が蓄積してしまうことが歯科心身症を引き起こしている可能性があるというのです。

「脳へのダメージを蓄積させないことが歯科心身症の予防にもつながります。50代を過ぎると脳の柔軟性は失われます。十分な睡眠をとると同時に、頭脳労働による疲労や気遣いなどの精神的ストレスを溜め込まないこと。それが避けられると、だいぶ楽になると思います」と豊福教授はおっしゃっています。

肉体以上に脳は疲れを溜めやすい。特に睡眠不足と精神的なストレスは脳に大きなダメージを与える要因だ。疲れがたまってきたら、たっぷり睡眠をとり、スポーツや趣味などでストレスを発散させるのが重要だ

少しぐらいの不調なら…と我慢しているという人も、それによってストレスを増幅させてしまいかねません。新型コロナウイルスの感染が広がるなか、たださえストレスが蔓延している状況です。前述のような自覚症状がある方は「がんばりすぎない」ように気をつけてください。この、「歯科心身症」についてもう少し詳しく知りたいという方は、ぜひ本誌12月号の健康講座「知っておきたい歯科心身症の正体」もご覧下さい。

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