あんかけスパゲティの衝撃。

ちょっと前の話になるが、東海道徒歩の旅の取材に出かけてきた。僕と武田は前日のイベントからそのまま現地入りし、キンは今回の出発地点にもっとも近い新幹線停車駅の豊橋に始発で駆けつけて、3バカトリオは集結したのだった。この取材は、武田がクルマで先行して撮影ポイントを探し、僕とキンはただひたすら歩いて進む。やらせは一切なしの取材スタイルを貫いていることは、当然のことであるはずが東電報道を見ていると、誇りを感じてしまう。悲しいことでもある。

まずは豊川から前回の冒頭を飾った豪雨撮影ポイントである法蔵寺で、晴天との比較カットを撮影してから、前回のゴール地点に移動して旅を始めた。秋晴れの晴天に恵まれ、気温はやや高めであるが湿気は少なく、絶好の徒歩日和であった。気分よく距離を重ねていく足取りは軽い。2ヵ月に1回のロケながら、2人の足がだいぶ旅慣れた仕様になっていることは、この歳でも体は進化することを教えてくれた。そういう意味ではタメ年のみなさん、おススメですよ。発見もたくさんあるし、出会いもある。今回は連休中とあって多くの東海道ウォーカーと遭遇したが、年齢層はやや高めで夫婦が多い。仕事をリタイヤした旦那と一緒に歩いているのだろう。若人よ旅に出よって、もう若くないか(笑)。

前号の反省点として食い物が少ないというのが上がった。たしかに地の食は旅の楽しみのひとつである。食いしん坊の僕にとっても、これはうれしい反省といえた。が、初日の知立までの道に昭和40年男がそそるような飲食店はなく、大型チェーン店ばかりで結局コンビニで済ますという、しょうもない事情になってしまった。またまた反省である。

だが翌日の名古屋までのアクセスはスゴかった。なんと昼時に3食ハシゴして、しかも3麺である。まずは名古屋を中心に圧倒的な勢力を誇る『すがきや』で、噂のフォークのようなスプーンのような独自の道具を華麗に駆使してラーメンをすすった。脅威の290円はコストパフォーマンスが高く、満足の一杯だった。チェーン店を嫌う2人なのだが、地場企業は許すのである。

名古屋を目指して進んでいくと、ちょっと入ったところにひっそりとたたずむように店を出す『ちから』という麺処を発見した。ついさっき食べたばかりで1度は通り過ぎたのだが、チェーン店ばかりの街で頑張る個人店はなにかあるはずだと野生のカンが働いた。さらにこの地できしめんは外せない。みそ煮込みうどんもマストフードであり、それぞれをすすってみると僕のカンは完璧だった。450円のきしめん、780円のみそ煮込みうどん共々、さっきラーメンを完食したばかりだったことを忘れさせる、素晴らしい一杯だった。

重くなった腹を抱えて旅を続けていると、先を行く武田から連絡が入り、マンガ喫茶にあんかけスパケティを発見したとのことだ。よーし、かかってきなさいと僕たちは戦闘モード全開で向かった。喫茶店も愛知文化とは切っても切れないものであり、格好の取材対象である。マンガが詰まった棚に囲まれた店内は、ほぼ満席で皆無心にマンガを読み込んでいる。ここで飯を食うのはなんとも変な気分だが、旅は異文化との交流なのである。待つこと数分、僕たちの目の前に現れたのはここまで2食を続けざまに平らげてきた合計92歳には、とてもなく大きな壁に見えた。そして一口運ぶと「?」な味が口内に広がった。形容できない味で、いまここにどんな味か書こうとさっきから考えているのだが、言葉を選んでこられないのだ。10日間煮込んだスープが、あんになっているとメニューに語られているが、なぜに10日間もかかったのかさっぱりわからない。やがて僕は一口ほおばるごとにその味に笑ってしまった。ハッキリと言えるのは、ここにもう1度来ることはない。そして、あんかけスパゲティなる料理そのものをキチンとジャッジするには、違う店でもう1度試さなければならないだろう。うーむ。

出されたものは残してはならぬとの教育を受けている2人だから、膨らむ腹と狂っていく味覚を抑えつつキチンと完食した。再び旅路についたが、しばらく衝撃を語り合ったのだった。そうして今回は熱田神宮をゴール地点として、次回も奥深き愛知文化を探るべくスタートを切ることにしたのだ。今回もたくさんのネタを拾い、取材を終えた。次号の2人の珍道中も乞うご期待ですぞ。

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