トロロそばから見える極楽浄土!?

夏のそばメニューの中で、地味ながら活躍するのが冷たいトロロそばだ。つけトロとオーダーするのが正しく、写真は浜松町の名店更科布屋のつけトロだ。僕のつぶやきでは最も多く登場する食事処がきっと吉野家とここだろう。先日も僕の極めて変態な牛丼の食い方を披露して友人から呆れられたが、江戸時代から続くこちらのそば屋では極めて江戸っ子らしい振る舞いでいただく。

 

僕にとって、夏そばメニューの王様は冷やしたぬきで、続いてざるとつけトロだ。みみっちい話だが、つけトロはどこの店もお値段高めで手が出しづらい。そして、高いわりにガツンと来ないから冷やしたぬきになることが多くなる。ちょっとそれるが、冷やしたぬきって邪道なメニューのようだが、更科布屋さんはさすが庶民の味方でラインナップしている。しかもここでおもしろいのは、温かい方のたぬきときつねはメニューに記していない。人様をばかすようなメニューは書かないのだ。が、オーダーすればきちんと出してくれる。江戸から続く店の矜持だろう。が、冷やしものは季節の到来を告げるものであり、きつねとともにメニューや壁に記される。この頑なさと柔軟な姿勢が合わさっているのも、この店の魅力だ。って、おいおい金もらってんじゃねえのかと思われそうだが、そんなことは天に誓ってない。敷居を引き上げる江戸そば屋がキライなのだ。江戸庶民の食いものを貫いてこそ粋なそば屋だろってのが持論で、それと合致しているから愛しているのだ。立ち食いそば屋に比べたら確かにお安くはないが、写真のつけトロで850円だからべらぼうってほどじゃない。

 

今日はいいことあったからつけトロを奮発しちゃうぞとオーダーして、待つことしばしで目の前に届く。まずは薬味を使わず、上に乗っているトロロを横にどかして、そばをちょこんとつけていただく。通な客の中には別盛りをオーダーする方もいるが、僕はそれを無粋と決め込んでいて、トロロが極力つかないように苦労しながらまず2〜3口をいただくのだ。ありゃりゃ、牛丼同様なんだか変態ちっくになってきた。続いて、トロロをだし汁に混ぜないままでやはり2〜3口いただく。うんうん、トロロとつゆのハーモニーが素晴らしい。さっきまでとの変化に、舌鼓がリューベンのドラムのように鳴り響くぜ、ドコドコ。ここまで来るともう誰も僕を止めることはできない。薬味投入!! 混ぜるべし混ぜるべし。親の仇のごとく混ぜるのは、渾然一体となったつゆへと生まれ変わらせるためだ。できたっ!!

 

こうなったら江戸っ子がなんちゃらなんざ小賢しいことは言わぬ。どっぷりとつけていただく。おーっ、なんという幸福感だろう。トロロと鰹だしと醤油の香りは、仏様からの贈り物なんだと感じさせられる。こいつは最寄り増上寺にお礼に行かなければならねえぜなんて、粋なことを考えながら一心不乱にいただく。ぷはー、旨かった。おっと、まだまだこれからだ。そば湯だよ、ハービバノンノン。仏様から送られたつゆにそば湯をたっぷり注ぐ。ここでポイントは混ぜない。ほんのりとつゆが香るそば湯を飲み進めていくと、少しずつ味が濃くトロロの香りも混じってくる。そこにまたまたそば湯を投入して、同じことを湯桶にあるそば湯を使い切るまで繰り返し、最後の最後にちょうどいい味加減のバランスになったつゆのそば湯割りを喉に流し込むと、あっ、極楽浄土が見えた。そんな至福のまま会計を済ませて店を出るのだ。うーむ、常に変態なんですな僕ったら(笑)。

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