鈴鹿8耐に棲む魔物が牙をむいた。

「これが8耐なんだ」と、まるで最新号で僕が懸命に書き上げたフィクションのような展開になった昨日の『鈴鹿8耐』だった。昨日ここでつぶやいた胸騒ぎは魔物が僕に知らせていたんだなと、本気でそう思えるほどだった。ホンダ、ヤマハ、カワサキのワークスチームは、最後の最後までまるでスプリントレースのように競り合いを続けた。マシンのホンダ、チーム力のヤマハ、ライダーのカワサキと言い続けてきたそのとおりに、それぞれの持ち味を存分に見せつけたのだった。1999年以来の取材歴となる僕にとって、これほどすばらしいレースは初めてだった。しかし…。

 

僕の書いた物語は昭和60年の『鈴鹿8耐』が舞台で、その一節に
「これが8耐なんだ」と、視界が涙でゆがんだ瞬間だった。
とある。ホンダのワイン・ガードナーが、2時間連続走りに打って出た瞬間を綴ったのだが、昨日、同じくホンダの高橋 巧選手は最後のピットインでシートをパートナーに譲らず、そのまま出た。だが相手は5年連続の世界チャンピオンが見えている、カワサキのジョナサン・レイ選手でやがて差は広がっていく。26年ぶりの優勝を少しずつ手繰り寄せていく中、転倒したマシンが突っ込んできた瞬間は魔物の牙を感じたが、これは間一髪で大事に至らなかった。

 

が、魔物はまたも牙を抜く。雨だ。そんなにカワサキに優勝させたくないのかよと、まるで去年の二の舞のごとく降り出した雨の中、ヤマハのアレックス・ローズ選手が魂の走りで追う。これまた涙があふれた。「これが8耐なんだ」と、最後の最後に次々と見せ場を作られていくのは、ハイレベルな3チームの競り合いの末だからこそだ。3チームのこれ以上ないバトルに、レースが終わってほしくないと思った。これも僕が書いた通りにこの瞬間が止まってくれればいいと思った。
と、まるでその気持ちだった。

 

8時間に近づくにつれ勝利が近づいてくるカワサキに、まさかまさか…、エイもういっちょ、まさかの転倒である。昭和60年の平 忠彦さんの悲劇を、これから未来は語られなくて済むほどのまさかである。奇跡の勝利を引き込んだのは、あの日優勝を逃してしまったヤマハを猛追したガードナーのような、ローズの魂の走りである。そんなふうに考えられるまで時間を要するだろうが、まさにこれが8耐なんだと、おっさんの涙腺は完全崩壊したのだった。

 

十分だろ、魔物さんよ。だがこれで終わらない執拗な攻めだな、魔物さんよ。表彰式までおこなったヤマハの勝利がスルリと逃げたのは、カワサキのマシン転倒を引き起こしてしまったコース上のオイルだった。赤旗が振られたことがさらに事態を無茶苦茶にした。これ以上書くのはバイク雑誌の方にするが、カワサキの抗議が通り、昭和60年の8耐のごとくヤマハの勝利がスルリと逃げたのだ。歓喜の表彰式からずいぶんの時間を経ていた。ひどすぎる。ヤマハファンはもちろんだが、カワサキファンだって、素晴らしいバトルを共に演じたホンダのファンも、きっとこの結果を素直に喜べないだろう。

 

後味の悪さは、この後の僕の仕事でも加わってしまった。これは魔物のせいでなく、心なき人間による。今回の8耐ではホンダを除く3メーカーからお仕事を頂戴した。その中で、カワサキから仰せつかったのはファンブースの盛り上げ役だ。写真のカゼギャルと呼ばれるレースクイーンたちと、全力で盛り上げた。トークショーや僕の賑やかしトークなどのステージイベントを何本も何本もこなした最後に、ライダーのサイン入りグッツなどをプレゼントするじゃんけん大会を催したのだ。が、ここに2人。何度も何度も後出しを繰り返す者がいた。このじゃんけん大会は、まだカワサキの抗議が通る前だから中止も考えたのだが、期待してくれている方がいる。頑張るべきだと、一度リセットして、そして気持ちに目一杯のブーストをかけて、やっと奮い立たせて行ったのだが、そんな傷だらけの気持ちに塩を塗り込み続けた2人だ。

 

実はこの2人、以前にもやられていたから、じゃんけん大会が始まる前に「ステージの上から後出しは見えるからやめてください」と叫んだ。これは、純粋に楽しみに来ている方々には聞き苦しいったらないだろうが、その方々を守るためにも心の叫びにしたつもりだ。が、やっぱりやる。僕が見ているのに目をそらしてやる。レース同様、ものすごく後味が悪く、無理やりの奮闘を無残にもぶっ壊された。昨日の夜は疲れ切っていたのに、レースとこの件の悔しさでしばらく眠りにつけなかった。

 

 

でもね、大きな感動もいただけたのだから、もう今日には振り切りたい。今宵は『浅草秘密基地』だしね(笑)。スズキの仕事もヤマハの仕事も、心を込められて懸命になれた魅力的なものだった。同じく、カワサキのブースではスタッフと感動を分かち合えたし、カゼギャルたちが頑張る姿がおっさんに突き刺さり、実力以上に張り切らせてくれた。すべてが終わって感じた彼女たちとのシンパシーは今日になれば宝物だ。そして、本来であれば鈴鹿8耐にライダーとして走るはずのカワサキのエース、渡辺一馬選手がゲストとして2日でなんと6回ものトークショーに付き合ってくれた。終了後の固い握手は、右手にその感触が残っているかのようだ。今夜はこれらだけを胸にだき、深く深く眠りたい。

 

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3件のコメント

  1. 長時間のステージトーク、お疲れさまでした。ジャンケン大会の後出し、まさに私の目前でした。私の存在を承知の上で、平然と続ける最低な行為。唖然とするだけで、声すら出せませんでした。直前、この一人は他のブースでのジャンケン大会で、バッグを貰ったと自慢していたのを耳にもした。それなのに、何も行動する勇気が無かった自分を、情けなく思った。過去のイベントでも、同じようなことがあった。あるKAZEギャルMCは、凜として、「そこの人、出すのが遅かったから、座ってください。」と言った。自然に、騒ぎ上がらないように。難しいことと思いますが、ハッキリと正すことは必要と考えます。そのうち、誰かが現場を撮影した動画が、流出するかもしれません。そうなると、そのイベントに対しても、批判の標的にされる恐れも。主催者、参加者、ともにこんな不正を根絶できるよう、協力して知恵を出し合いたいと願っています。今回、何も出来なくて、すみませんでした。

    • オオタ ヒロシさん、ありがとうございます。おっしゃる通りです。次回までには何か対策を考えます。
      何もできなくてなんてそんなそんな、嫌な思いをさせてしまって申し訳ないです。

      • 長年、編集長が主催するイベントの一人のファンとして、日本各地に旅する機会を作ってくれたこと、感謝してます。今回に関しては、カワサキチームの8耐優勝で、この不快感は、かなり軽減されました。次のイベントでの、編集長の楽しいステージトーク。楽しみにしてます。

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