【懐かしの名盤】クイーン (3/5)

ブログ特別不定期連載記事「懐かしの名盤ジャンジャカジャーン」である。音楽と密接に生きてきた昭和40年男にとっての名盤を、の独断でセレクトしていこうというもので、 今回はクイーンの名盤についての3回目だ。クイーンは僕ら昭和40年男にとって密接だった方も多いことだろう。さて、僕が選ぶ一枚は?

中1の僕が手に入れたクイーンの2枚を、熱心に聴く日々が続いた。『ジャズ』(’78) には、大曲はなく、どれもムダなく仕上げられていて、シングル集のような仕上がりとなっていた。一方の『オペラ座の夜』(’75) はクイーンの、というより、ロックの歴史に燦然と輝く名作中の名作である。イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』(’76) だったり、ツェッペリンの初期だったり、バンドの持っているエネルギーや才能、モチベーションなどなどが有機的に絡み合い、奇跡が起きたかのようなアルバムや楽曲が完成する瞬間がある。『オペラ座の夜』はまさにそうで、ここに収められた「ボヘミアン・ラプソディ」が象徴的だ。分厚いコーラスと複雑な楽曲構成、美しいメロディが絡み合い、ロックの枠を完全に超えたものである。英国ではロックの名曲ナンバー1に選ばれることもよくあるほどだからね。

クイーンがスゴイのは、完成させた世界を自らぶち壊し続けたことで、この2枚の違いもそれを端的に表している。ファーストからラストの『イニュエンドウ』(’91) まで、18年に渡り創出されたオリジナルアルバム13枚 (『フラッシュ・ゴードン』のサントラ (’80) を入れると14枚) は、どれも進化と冒険を繰り返していて、若干の逆戻り感がある作品は存在するが、ストーンズの『エモーショナル・レスキュー』(’80) や ツェッペリンの『イン・スルー・ジ・アウトドア』 (’79) のような、制作モチベーションが見えづらい駄作はない。余談だが、そんな肩の力が抜けた作品が意外に好きだったりする僕だ。エアロの『ナイト・イン・ザ・ラッツ』(’79) や『美獣乱舞』(’80 …なんちゅー邦題じゃ) のダメダメアルバムも大好きだしね (笑) 。

常に変化を求める真面目な姿勢が、長きに渡り一線でいられた大きな要因だ。ファンは「ボヘミアン・ラプソディ」のような複雑な大曲を求めるが、アルバム『世界に捧ぐ』(’77) で完全に裏切り、だがそのおかげでアメリカでの大成功を収めた。『ジャズ』は『世界に捧ぐ』の延長線上にあるものの、ずいぶんと世界が異なる。たとえば「バイシクル・レース」のような、リズムの面白さと曲のユニークさでグイグイと押してくる仕上がりは、わかりやすい進化のカタチだ。決めるところではコーラスをバシッと決め、たくさんのアイデアや要素を入れこんでいるわりには演奏時間も短い。これがアルバム全体を通じて行き届いていて、そのスタイルの初期段階の完成形として『ジャズ』が持つ意味は大きいと思う。『オペラ座の夜』がフレンチフルコースなら、『ジャズ』は寿司のおまかせ握りといった感じで、甲乙なんかつけられないおいしさがある。ただ、ロック史に与えたインパクトや、先に述べた奇跡の瞬間ということで評価すれば『オペラ座の夜』に軍配は上がる。

この2枚によって、僕にとってクイーンの存在が世界一である期間が続き、『ザ・ゲーム』(’80) やサントラでありながらも『フラッシュ・ゴードン』は予約して買うほどのファンぶりであった。だが昭和57年に出た『ホット・スペース』は買ってないどころか聴いてもいない。急速にクイーンから離れていったのは、ストーンズとRCサクセションのせいだったのだ。
 
つづく → (4/5)
 
前回 → (2/5)
 

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1件のコメント

  1. はじめまして、いつも楽しく拝見しております、昭和59年女です。

    スウィートシスターやセイヴミーの美しさにうち震えながら、大学生のときに初めて聴きました。
    調べたら、昭和40年男のみなさんが中三の頃にリリースされたアルバムなんですね。
    こんなカッコイイアルバムがあったら、受験勉強も手につかないことと思います。。

    当時の思い出をまじえつつの『懐かしの名盤』、更新を楽しみにしております!

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