なぜ、おっさんは普通のラーメンを愛するのか?

久しぶりに、無性に食いたくなり出かけた。会社の近くにある極めて普通のラーメンを出す店で、生駒軒を名乗る昔ながらの中華店だ。ランチタイムに暖簾をくぐれば、そこは同世代のおっさんたちであふれ、一様にラーメンをすすっている。俺たちのパラダイスだ。

 

ダイエット中ながら、久しぶりにガッツリ食おうと禁断の炭水化物祭りとなる半チャンセットにした。迷わず醤油でお願いすると待つこと数分、どんぶりいっぱいの昭和が届けられた。チャーハンは後からあおりたての熱々がきた。セットだと作り置きを盛るところもあるが、そうでないのが嬉しいじゃないか。

 

スープを口に運ぶと、予定していた味が口いっぱいに広がる。飛び上がるほどうまいわけでないが、ホッとするようなまっすぐに普通な味とやさしさを感じる。これでいいのだ。バカボンのパパになりながらうなづく。スープから感じる醤油のコクがまたシンプルでいい。足し算ばかりの料理が多い昨今、そっちを愛する方々からは貧相とでも言われそうである。

 

ラーメンを平らげたらチャーハンだ。これまた昔ながらの安心感がたまらない。残念ながらパラリではないが、俺たちがガキの頃はどこもかしこもパラリなんてわけじゃなかった。ビッチャリなんてのも普通に出くわしたじゃないか。もちろんここは“ビッチャリ”じゃない。適度なお湿りと言えばいいかな(笑)。

 

厨房から「ありがとうございました」と威勢のいい声が聞こえ、ランチタイムが終わりに近づくにつれその声はテンポを増す。中は見えないのだが、2名の男性が鍋を振るっているようだ。そんな、本来あたり前田のクラッカーなことも味を高めてくれる。ところが、こんな素敵な昭和な中華店は現在絶滅危惧種だ。今のうち、そして俺たちの胃袋が元気なうち、ガンガン頬ばろうじゃないか。

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