俺たちの選挙戦! 「昭和40年男の悲惨な戦い」

昭和40年男の悲惨な戦い

昭和40年男の少年時代は、決して楽しいことばかりじゃなかった。今思えば笑っちゃうようなことでも、俺たちは真剣に悩み、戦っていた! ここではホロリと苦い「悲惨な戦いの記憶」を通じて、昭和40年代&50年代という時代を振り返ってみたい。

汚職にまみれた? 我が小学校を僕がきれいにします!

 解散総選挙だね。この号が出る頃には、もういろいろ決まってるんだろーけどさ。
俺たち昭和40年男も選挙を戦ったもんだよ。20歳の初投票かって? いやもっと前、生徒会の選挙だよ!
初めての選挙は小4の終わりだった。小5になったら学年から生徒会副会長と書記を選ばなきゃいけねーってことで、我が4年3組からも立候補者を出すことになった。まあウチのクラスは学級委員長のH田君が頭もよくてスポーツ万能だから、当然H田君が出るのかと思ったら。
何かの間違いで副会長候補になっちまっただよこの俺が! “帰りの会”で誰を出すかでモメて「人気者を出せばいいってもんじゃないと思います」みたいに話がネジレて。人気もないのに出馬ってワケわかんねー。
そして選挙活動って何すりゃいいのかクラス全員わかってなくてボーッとしてたら、あっと言う間に選挙当日。体育館のステージに上がって所信表明演説しろって言うんだけど。
なかったんだよ所信! しかも原稿も何も用意してなくて丸腰でステージに上がったらさ、他の候補者がみんな手元の原稿開いて読み出して、あれはあせった。人生でベスト(っていうかワースト)3に入るくらいあせったね。まあ適当にしゃべったけど、もともと人気もないから見事落選。小4のガキには厳しい試練だったね。

月日は百代の過客にして、すぐに1年が過ぎて小5の3学期、また生徒会選挙の季節がやってきた。今度は6年生になるから、クラスから会長候補を出さなきゃいけない! 1年前の反省をふまえて「やっぱ無難にH田君を出そう」って落ち着いたのはいいけど、俺もまた書記候補で出ろってことになって。去年が副会長で今年は書記、なんだかなこの格下げ感。
そして今度はちゃんと選挙活動しようってことになって、まずは校内の壁にポスターを貼ろう大作戦! ひとり1枚ずつ、H田君か俺を応援するポスターを作ってこいってことになったんだけどさ。
いざ期日になったら、すっげー誰も作ってこねーの。無策を反省したんじゃねーのか。そんなだからH田君応援ポスターは俺が作ったのも採用されて(立候補する俺がなぜ作る?)さっそく壁に貼られた。そしたら。
「大野(俺の本名)が作ったポスター、立候補の“補”の字が違ってない?」
ガーン! 「補」の字のコロモ偏の点が足りなくてシメス偏になっている! 序盤から失速ムードだ5年3組。
そして他の候補者のポスターも貼られ始め…あれ?
「◆◆君はこの選挙を公明正大に戦います!」「★★君なら、この学校をきれいにできる!」
何が起こっているんだ我が小学校は! そう、俺たち昭和40年男が小5の時、忘れもしないあの事件が起こったのだ。ロッキード事件が!
元・総理大臣の角栄センセイが逮捕される前代未聞の汚職劇をテレビで連日見て、俺たちの頭にはすっかり〝選挙=汚職〟のイメージが刷り込まれていたのだ。ってか選挙違反も汚職もねーよ千葉の田舎の小学校で!
その後も我が5年3組は、クラス一の巨漢T君がH田君を肩車して休み時間に各クラスをまわる〝肩車大作戦〟など独自の選挙戦を展開。そして迎えた選挙当日、俺は再び体育館のステージに上がった。屈辱の落選から1年、さあリベンジだ!
「続いて書記候補、5年3組大野君の所信表明演説です!」
ステージに上がり一礼、体育座りで俺をガン見する生徒たちが、俺の目の前にズラーッ。
――なんてこった、1年前と同じ失敗を犯すとは!
なんと俺はステージに立ってから、今年も演説用の原稿を用意していないことに気づいたのだった。人のポスター作ってる場合かっつーの!
しどろもどろで適当にしゃべったものの、2年続けて落選したのは言うまでもないから言わせるな。日本をキレイに? 無理だしツマんねーよな、そんな日本。

文:カベルナリア吉田

【「昭和40年男」vol.46(2017年12月号)掲載】

昭和40年生まれの紀行ライター。普段は全国を旅して紀行文を書いている。この1月に新刊『ビジホの朝メシを語れるほど食べてみた』(ユサブル)出版したからヨロシク! 去年出した『おとなの「ひとり休日」行動計画』(WAVE出版)、『突撃! 島酒場』(イカロス出版)、『何度行っても変わらない沖縄』(林檎プロモーション)、『狙われた島』(アルファベータブックス)全部ヨロシク! 2月17日には東京・世田谷の「かなざわ珈琲」で手料理つきバレンタイントークショーやるから来てくれよな!

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