【悲惨な戦い】愛と青春の文化祭!

昭和40年男の悲惨な戦い

昭和40年男の少年時代は、決して楽しいことばかりじゃなかった。今思えば笑っちゃうようなことでも、俺たちは真剣に悩み、戦っていた! ここではホロリと苦い「悲惨な戦いの記憶」を通じて、昭和40年代&50年代という時代を振り返ってみたい。

ディスコとミトコンドリアと葉子と扇風機!

夏が終わって秋が来た。枯れ葉が舞い物思う秋。枯れ葉よ〜♪

たそがれている場合じゃない。中学最初の秋を迎えた俺たち昭和40年男は秘かに燃えていた。なぜなら“文化祭”があるからだ! 文化祭、それは他校女子とのフレッシュな出会いの場! 日頃見飽きた古女房、いやクラスの女子を忘れ、束の間のアバンチュール!

「やっぱ模擬店じゃねー?」

俺だけじゃない。男子はみんなフレッシュな出会いを期待し、自然と模擬店案が浮上した。

 他校女子「わぁおいしそう、これひとつください」
 「ひゃ、150円です」

硬貨の受け渡しで触れ合う手と手!

 「…あ、ゴメンなさい」
 女子「いえ…優しいんですね」
 「あのその今度よかったらそのお茶でもその…」

ギャーッ!! 文化祭だ模擬店だ、カモンベイビー他校女子!

「じゃあウチのクラスは動植物の生態ってことでいいな?」

はあ? なんと62歳軍隊上がり老担任の一言で(当時の62歳はおじいさん)我がD組の出し物は“動植物”に決まってしまった。
ボボンと並ぶツイタテに、カエルの解剖イラストやミトコンドリア顕微鏡写真が貼られただけの我がD組に、訪れる他校女子などいなかった。唯一の客は、隣の隣のクラスのガリ勉女子A子だけ。

「私、にぎやかなのが苦手で、こーゆーほうが落ち着きます」

じゃあ寺に行き尼になれ!とも言えず、ずっと滞在したA子の接客とミトコンドリアで俺の文化祭デビューは終わってしまった。

我が中学はトンチキなことに、文化祭は2年に1度(なんじゃそりゃ)。3年の時は映画作って盛り上がったが、当時の俺は彼女がいた(オマセさん)ので他校女子との出会いは高校に持ち越し。

ちなみに中3の頃は『ザ・ベストテン』全盛期で、我が中学でもリクエストを募集しベストテン発表を行った。しかしそこはおバカな中坊、大ヒット中の『青い珊瑚礁』や『哀愁でいと』に混ざって、トンでもない曲がランクイン。

 MC女子「では○○中学今週の第7位!(ヒソヒソ声で)これ流していいの? (元に戻り)第7位は畑中葉子『後から前から』です!」

…微妙な雰囲気のまま中学の文化祭は終わり、高校へ。しかし音楽サークルに入った俺は、1年&2年とも文化祭はコンサート出演に追われ、クラスの出し物に参加できず。そして高3文化祭、我がA組の出し物は…映画『サタデー・ナイト・フィーバー』で大流行したディスコに決定! 学ラン生活の総決算だ、他校女子と踊るぞ!

「ディスコはあきらめてくれ」

ここでまた担任教師Sから横ヤリが。校舎が古くて、大勢で踊ると湿気で天井がふやけて剥がれてしまうからってなんじゃそりゃ!

しかし最後の文化祭、引き下がれない。俺たちは「段ボールで巨大排気パイプを作り、扇風機で熱気を送り屋外に逃がす」というすさまじいアイデアをヒネり出した。

 担任S「もし剥がれたら…」
 俺たち「大丈夫です!」

天井が剥がれたら先生の出世に響く? もはや失敗は許されない。俺たちはクラス46人総出で、段ボールをガムテープで隙間なく貼り合わせた。そして学校の真ん前に住む同級生の家から扇風機3台を運び出し、巨大パイプの送風口にセット、スイッチオン!

やった、教室にこもった空気が外に流れ出る。やったぞ!
そして文化祭当日、我がA組のディスコは…なんと入場制限が出るほどの大盛況! 天井が剥がれることもなく、高3の秋の戦いは無事に終わったのだった。そう、文化祭は戦いだった。大人が作り上げた秩序との!なんてね。

ちなみに文化祭の発祥は、戦後の昭和23年頃だとか。当初はクラス単位の出し物は少なくて、有名人の講演などもあり、今の大学の学園祭に近かったらしい。

そしてハッと気がつくと、パイプ作りで燃え尽きて、他校女子のこととか完全に忘れていたのだった。まあいっか。青春だね。

文:カベルナリア吉田

【「昭和40年男」vol.39(2016年10月号)掲載】

カベルナリア吉田/昭和40年、北海道生まれの紀行ライター。普段は沖縄や島を歩き、紀行文を書いている。11月にシニア向けの東京お散歩『おとなの「ひとり休日」行動計画』(WAVE出版)を発売。『何度行っても変わらない沖縄』(林檎プロモーション)と『突撃!島酒場』(イカロス出版)、『狙われた島』(アルファベータブックス)もヨロシク。新宿Naked Loftで12月24日(!)にトークショー「日本のムカつく旅」開催するから来てねー! 175cm×86kg、乙女座O型

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