日曜の吉野家はいい。

会社のある浜松町は増上寺や東京タワー、浜離宮などのスターを有する観光地と、オフィス街の2つの表情を持つ。うちの会社周辺は完全なるオフィス街で、土日になるとほとんど人がおらず飲食店もほとんどが休みになる。そんなんでよく利用するのが吉野家だ。

 

平日に比べると客は断然少なく、のんびり召し上がっている方が多い。休みだろうという方に混じって、休日出勤している戦士たちもいる。でもそんな方々もどこかのんびり感を漂わせていて、なんともいえない空気が店内に流れる。言い方は悪いが、平日のランチ時はまるで餌をほおばるブロイラーのごとく店員のさばきの中で急いで済ますだけで食事とは言い難い。日曜はその感じが全くせず、吉野家ファンしてはうれしいのである。加えて、多くの人が休日を謳歌している日にひとりで吉野家を利用しているちょっぴり切ない感じが好きだ。ふっ、みたいな感じ。クリスマスイブの夜を立ち食いそばで済ますのが僕の恒例になっているのも、そんな“ふっ”なのである。きっと同世代諸氏ならわかっていただける感覚だろう。

 

のんびりと食って仕事に戻る。吉野家は自販機でないのがいい。きっとこだわりがあるはずで、取材してみたいものである。先日、築地市場の吉野家がすげー行列になったなんて騒がれていたけど、よくよく考えたら僕は行ったことがなかった。先日このサイトでネタにした寿司屋のおやじは、築地市場の吉野家はちょっと違うんだよと言っていたから、一度訪れようと思っていたのに残念無念だ。

 

と、吉野家は他の牛丼チェーンと異なる味がある。若かりし日、深夜の吉野家でひとり紅生姜とおしんこでグタグダとビールを呑むことが多かった。これもまた“ふっ”である。そう、中島みゆきさんの『狼になりたい』もこの感じを味わえる。あの曲の舞台だということが、僕の吉野家に対するイメージアップになっているのも間違いなしだ。同世代諸氏だけでなく、みゆきさんとも“ふっ”をしっかりと共有している気がする。だが、深夜の吉野家で呑めなくなってしまったことだけは残念で、『狼になりたい』は現代人には理解できない遺産になってしまった。と、ぐちゃぐちゃと語ってきたが、安くてうまいのをのんびりと食えるのは得した気分になれるのさ。

 

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