REOスピードワゴンの甘さはどうよ?

あそれっ、締め切りだ、締め切りだ。そして終わればすぐに次号の制作が始まる。さらに前号 (vol.50) の特集がパッケージされたコンピレーションアルバムの発売もいよいよ迫ってきた。CDも雑誌と同じで、一つのプロダクトを生み出すってのはうれしいものだ。同世代諸氏に喜んでいただけるといいのだが。

 

これまでも解説してきたCD『昭和洋楽』は、頭から4分割してテーマを定めた。「ダンシングシスター」や「マイ・シャローナ」など5曲で構成した “昭和の王道ゾーン” に始まり、「宇宙のファンタジー」「ハロー・ミスター・モンキー」などを収めた “昭和のディスコゾーン” へと続く。そして今回のコンピ作りにおいて、強い色を放つ役割を持たせた “百花繚乱ゾーン” へと突入させた。スーパートランプの「ブレックファスト・イン・アメリカ」、ガールの「ハリウッド・ティーズ」ときて、これも絶対に入れたかった昭和ソング、REOスピードワゴンの「キープ・オン・ラヴィング・ユー」へとつないだ。

 

 

この曲を友人から聞かされたのは高2のことで、の嗜好は黒っぽい音楽に移行中だった。ポップなテイストよりも、いなたい感じ・硬派な曲を好むようになっていた。甘い曲が嫌いなわけじゃないのだが、そっちにいってしまうと、なんと言ったらいいか堕落してしまうような妙な気持ちだった。その代表的な曲が「キープ・オン・ラヴィング・ユー」だ。だってさ、曲名からしてスウィートじゃない。そしてメロディもアレンジもヴォーカルの声もぜ~んぶスウィート。ダイエットでケーキを絶っているところに、突然箱が届けられて開けたらおいしそうなショートケーキだった (そんなシチュエーションあるか?) てな感じ (?) の曲だ。聴かせてくれた彼に「こういうポップスは好みじゃないよ」と言ったのは、ダイエット中…じゃなかった、移行中だったからだ。一発で覚えたその曲だったが追いかけなかった僕で、こういうのをやせ我慢と言うのだろう。

 


35年以上の時を経て今、聴かせてくれた彼、山本に感謝している。今回のコンピにマストだと思ったのはあの日があったからだ。

 

この曲に続けて入れたのは、テクノポップをぶっ壊してしまったと僕が位置づけているMの「ポップ・ミューヂック」だ。クラフトワークとかディーヴォ、国内でもYMOなんかが、シンセと前衛的なセンスを引っさげて登場してきた。やることなすこと意味深で未来的だった。そんな音楽をシーンはテクノとくくった。そこによりによってポップソングを投げ込んでしまったのがMだ。この曲によってテクノはピコピコさせればいいもので、前衛でなくてもOKなんだと敷居が下げられ、イモ欽トリオ「ハイスクールララバイ」へとつながり、その歴史に終止符が打たれたのである (笑) 。という、歴史的転換を成し遂げた「ポップ・ミューヂック」は『昭和洋楽』にふさわしい曲だ。

 

このゾーンのラストを飾ったのが「サイキック・マジック」で、このグループこそ『昭和洋楽』極まれりだ。グループ名の “G.I.オレンジ” には「???」となる同世代諸氏が多いかもしれないが、曲は絶対に知っているはず。極まれりとしたのはこのグループは日本製なのだ。クイーンやチープ・トリックなど、日本から人気が出たバンドこそあれ、まさか作っちゃうとは恐るべし。テレビ番組タイアップにまで持ちこんで売ったこの曲が “百花繚乱ゾーン” を締めくくる!!
 

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